教職大学院
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履修例(2018年度1年制コース修了)履修モデル◆大学院に進んだ理由 私は文学部で学んだ後、すぐに夢であった教員になりました。多様な高校に勤務しましたが、いずれの高校でも「主体的・対話的で深い学び」の視点を手掛かりにしながら、目の前の生徒に応じて、より良い授業を提供しようと試行錯誤してきました。どの生徒も一人ひとりが本当に可愛く、一生懸命に授業をすれば、それ以上のものを返してくれます。しかし、多くの業務に日々追われるように過ごし、実践を振り返る時間はとれず、いつか教育学を学びたいという気持ちをずっと抱いてきました。高大接続改革という転機を迎え、教員生活も10年目という節目に、これまで学校現場で取り組んできた実践を理論的に再構築する機会を設けたいと考え、入学を志しました。また、国語科として必要な、教養と視野を広げるにあたって、総合大学としてのスケールメリットを享受できる点にも魅力を感じました。◆履修科目「学校臨床実習Ⅲ」(3単位)「主体的・対話的で深い学び」の視点に基づく「古典探究」の単元モデルの開発 ─公立中高一貫校四年生・漢文「死諸葛走生仲達」の脚本作りを通して─ 平成31年度からの「古典探究」の先行実施を目前に、次期学習指導要領に明記された言語活動を取り入れた授業を通して、単元モデルの開発とその検証に取り組みました。古典という教科に合わせたオリジナルの単元モデルを考案し、そこに「主体的・対話的な深い学び」の視点を反映させたことで、生徒達に古典探究の資質・能力を身に着けることに繋がりました。さらに、漢文の脚本作りという言語活動の充実を通して、生徒達を深い学びへと導く効果が見られました。また、「探究学習の手引き」というオリジナルの支援教材を作成したことも、探究学習の支援に役立ちました。今後にも繋げていきたいです。◆大学院で学んだこと 大学院には、本当に代えがたい出会いがあります。様々な専門分野を持つ、憧れの教授の元を自ら積極的に尋ねてアドバイス頂いたことで、多様な視点を得て、考えを広げ深められるようになります。その分野の第一人者から理論を元に直接授業デザインについてご指導頂ける感動を覚え、高い教科専門性と豊富な経験を元に具体的な教科指導を頂ける喜びを感じています。私にとっては一年間だけの貴重な時間を真摯に受け止め、私の意志を尊重して下さる教授から薫陶を受け、存分に学びを深められました。自分の中で点在していたこれまでの実践が、理論によって裏付けされることで線となって繋がった確かな手応えを感じています。 また、異校種の現職と交流し、発達段階ごとに創意工夫しながら生徒と向き合う姿を垣間見て、どんな校種でも思いは同じだと感じ入りました。他県の高校の現職と自主ゼミを結成して教科を越えて切磋琢磨できたことや、ストレートマスターと学び、学生の立場に戻って授業を受けたことは、自らの教員としての在り方の省察に繋がっています。教科や勤務先、校種、年代を越えて、大切な繋がりができたことが、この先の教員人生にも役立つと確信しています。  1年制コースは必要単位を1年で取得するため、時間割が詰まっていますが、空きコマを利用して学部の授業を聴講したり、学会や講演会など早稲田の催しや、院の主催する研究会に参加したり、お気に入りの図書館でゆっくり専門書を読んだり、豊かな時間を過ごせたことは、涵養に繋がりました。◆大学院へ進学を考えている方へ 一年間現場を離れることで、生徒達、職場の同僚たちに迷惑を掛けてしまうと、一歩踏み出すことを躊躇なさっている方も多いかと思います。私も、数年間逡巡しました。しかし、一生の仕事として覚悟するにあたり、この先変化が激しい世の中において生きる力を、生徒に育む教員になるためには、もっと自分自身をレベルアップさせたいという思いが強くなりました。所属校の尊敬する先輩方に相談したところ、背中を押してくださったことも決断の一助となりました。そして、その決断が正解だったと今実感しています。通常の勤務から離れ、教育活動全体を俯瞰できたからこそ見えてきたことが沢山あります。特に実習で、初めて出会う生徒達と共に授業を作り上げた感動は一入でした。毎日当たり前のように生徒と顔を合わせることがどれだけ貴重なことなのか、生徒との一期一会を大切にしようという思いを強くしました。さらに、多様な生徒を受け入れる公立高校への愛着の思いが深くなり、自分の仕事を改めて誇りに感じています。授業を通して、より効果的に、生徒達の国語力を伸長するにはどうしたらいいのか、重ねてきた実践の整理をし、感覚として理解していることを理論的に繋げることができました。一つ一つばらばらに理解していたことが、この一年間を経て「一つに繋がった」という手応えを感じています。周囲の方々の支援があり、自分の学びを深めることができたこの一年間は、この先の教員人生の糧になります。今後は自分一人にとどまらず、授業に悩む同僚との間に学びあいの輪を広げていきたいです。このような意味ある制度を保ってほしいと思いました。基本科目 18単位【教育課程の編成及び実施に関する領域】 カリキュラム開発の理論と実践 カリキュラム・マネジメントの理論と実践【教科等の実践的な指導方法に関する領域】 授業設計の実践力 授業分析の実践力【生徒指導及び教育相談に関する領域]】 学校カウンセリングの理論と技術 児童生徒の社会性・規範意識を育てる開発研究【学級経営及び学校経営に関する領域】 学級経営の理論 学級経営の実践力研究 学校組織開発の理論と実践【学校教育と教員の在り方に関する領域】 教員の社会的役割と職業倫理 学校とコミュニティ開発共通選択科目 2単位 教育実践論文演習分野別選択科目 16単位【A群:カリキュラム開発・授業力形成に関する科目群】 学習指導のための教育心理学 【B群:生徒指導・学級経営の力量形成に関する科目群】 担任学の実践研究 キャリア教育の理論と実践【D群:学校経営・地域連携の力量形成に関する科目群】 学校マネジメントと学校再生に関する理論と事例研究 学校経営に活かす教育データ分析の実践研究 教育行政実地研修 教育システムと制度設計1 教育システムと制度設計2学校における実習 10単位 学校臨床実習Ⅰ(実習単位認定による) 学校臨床実習Ⅱ(実習単位認定による) 学校臨床実習Ⅲ※2018年度のカリキュラムで履修されています。現 職:東京都公立高等学校 教諭入学時:東京都公立高等学校 教諭田たはら原 桜ようこ子 さん(32歳)13

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