社会科学研究科/GSSS
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研究科長メッセージ 現代社会が複雑化し、より高度な専門性と幅広い知識が必要とされるにつれ、大学院教育の重要性が増してきました。実務に直結するような研究科が設置され、なかには国家資格の取得を目的とするものもあります。このように大学院の多様化が進んでいますが、どちらかの目的に特化したカリキュラムになっていることが多いようです。 本研究科は設立当初から、学部を終えたばかりの学生だけでなく、社会人にも広く門戸を開き、講義、演習などすべてにおいて、ともに学ぶ体制をとってきました。近年は、アジアを中心とする留学生が増え、早稲田大学の中で留学生比率の高い研究科のひとつになっています。 「理論と実務の交流」のためには、さまざまな目的とキャリアをもった人々がともに学び、理論・理念と現実社会との間でフィードバックを繰り返しながら研究を進めることが不可欠です。その意味で実務経験を積んだ社会人院生の存在は、観念的・理念的になりがちな議論を現実に引き戻してくれるでしょうし、逆に現実社会に捉われない理性や感性が社会人院生にとって新鮮な刺激となることもあるでしょう。加えて、留学生は海外からの異なった視点を提供してくれるはずです。このような多様な見方や志向性が交錯するなかで、院生や教員が新たに気づくことも多く、さまざまなバックグランドをもった院生がともに学ぶことによる教育・研究効果には大きなものがあります。 また、中国の北京大学との間では博士課程で、社学研独自では清華大学との修士課程の間でダブルディグリー協定(両大学の学位を同時に取得できるプログラム)も結んでいます。 現代社会が直面する問題や現象はきわめて複合的であるため、多角的視点からの分析が不可欠であり、あらゆる専門知識を動員することが求められます。しかし、複数の学問領域の専門知識を修めることは不可能です。それでも、軸足をある専門分野において、他の専門分野の基礎概念、分析方法を理解して、批判する力、構想する力を育みながら、現代社会の諸問題に切り込んでいくことは可能だと考えます。もちろん、そのためには人一倍の努力が必要であることは言うまでもありません。 具体的には政治学、法学、経済学、商学、社会学、歴史学、哲学、そして理学などの伝統的な学問領域で学び、このような姿勢は、研究指導、演習などを通して、院生にしっかりと引き継がれることになります。修士課程、博士課程ともに、指導教員だけでなく、他の教員が少し異なった専門分野から院生指導をサポートする体制が取られているのは、そのためでもあります。 修士課程では修了要件を満たすために講義科目も履修せねばなりませんが、その選択の自由度が大きいことも本研究科の特徴です。が、それは一つのガイドラインにすぎません。しかしそうすることによって、専門性の狭隘な深みにはまりがちな研究姿勢が回避されて、本研究科ならではの学際的な研究が行われることになります。 社会科学研究科は、修士課程が1994年に、博士課程が1996年に開設された若い大学院ですが、それゆえに新たな試みを実践し、たえず現実社会の変化や要請に対応した改革を続けてきました。2019年度からは大幅な大学院改革を反映して、入試制度も変わり、研究分野も2専攻のもとで、地球社会論には現代日本学研究、国際協力研究、グローバル市民社会研究、政策科学論にはサスティナブル開発研究、公共・社会政策研究の5分野に再編しました。これらの新分野では、環境、平和、国際協力、福祉、企業、労働、地域社会など、現代社会が直面するイシューから、研究を進めていくこともできます。 活躍の場は研究・教育機関、行政機関、市民団体、企業、政界などさまざまです。留学生も含めて、今後グローバルな場で活動する人たちも増えてくることでしょう。これからも学部を卒業したばかりの学生、実務経験の豊かな社会人、および留学生がともに学べる教育・研究の場として、新たな知の構築を目指していきます。大学院社会科学研究科長山田 満 2

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