文学研究科シラバス2021
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科目名ドイツ文学特殊研究1ハインリヒ・フォン・クライスト聖ドミンゴの婚約を読む担当者名博士(文学)京大西尾宇広独語独文コース2単位秋学期木曜日3時限1年以上―――授業概要フランス革命後の激動の時代を生きたプロイセン人作家ハインリヒ・フォン・クライスト(1777-1811)の物語作品聖ドミンゴの婚約(DieVerlobunginSt.Domingo)(1811)を精読します。1804年にフランス支配からの独立を実現し、世界初の黒人共和国を樹立したハイチ革命を背景とする本作は、大規模な政治的・社会的変動に翻弄される個々人の運命を描きつつ、とりわけ植民地において噴出する〈外国支配からの解放〉と〈レイシズム〉という問題を多彩に主題化したテクストです。物語の語り手が一貫して白人の視点に立ちながら、折にふれて黒人の暴挙に批判的な注釈を加えるのに対し、作者クライストはといえば、同時代のナポレオンによるドイツの占領に抵抗して、祖国の独立を求める戦闘的な言論活動を展開した書き手のひとりでした。そのような作家の立場からすれば、カリブの黒人たちが(同じくナポレオンに敵対するかたちで)遂行した独立闘争に対する評価は、語り手の視点から見えるほど単純なものではありえません。息つく暇もなく展開する筋の巧みさもさることながら、そうした語りの視点の問題ときわめて自覚的に取り組みつつ、さらには近代ヨーロッパ(文学)につきまとう植民地主義という巨大な問題をその最初期の段階において鋭く切り出したこの作品には、まさしくクライスト文学の醍醐味が凝縮されています。この授業では、必要に応じて注釈や二次文献も詳しく参照しながらテクストを精読することで、1800年頃の特有の歴史的状況への理解を深めるとともに、一方では政治的な主題を扱う際の文学的作法の可能性について、他方では政治的な出来事に潜在する文学的要素の重要性について、受講者と一緒に考えていきたいと思います。授業の到達目標古典的な文学作品を原語で読みこなすための読解能力を養うとともに、ひとつのテクストを複数のレベルで理解し解釈するために必要となる文学研究の手続きを、経験的に習得することをめざします。成績評価方法試験0%なし。レポート0%なし。平常点100%毎回の出席と訳読、議論の際の意見発表、担当箇所の報告など、授業への貢献度を総合的に評価します。その他0%なし。科目名ドイツ文学特殊研究2二十世紀初頭のウィーン文学とその周辺担当者名荒又雄介独語独文コース2単位春学期水曜日4時限1年以上―――授業概要一般に世紀末ウィーンと呼ばれる19世紀末から20世紀初頭にかけてのウィーン文化については、日本でもすでに一定のイメージが形成されている。ハプスブルク王朝の最後の華やぎ、爛熟期を迎えた市民文化、滅びゆく時代の内に胎動するモデルネ等々については、手軽に読める書物がいくつもある。ところが、音楽(マーラー、シェーンベルク)、造形芸術(クリムト、シーレ)、精神分析学(フロイト)などへの高い関心はともかく、この時代の文学については、日本の読者には明確な像が結ばないようである。本講義では、この時代の代表的な作家フーゴ・フォン・ホーフマンスタールが、アルトゥーア・シュニッツラーの戯曲に寄せた序文を手掛かりにして、文学の新潮流とそれを担った作家たちを紹介した後、第一次世界大戦までこの都市で展開した文学運動を概観し、さらに戦後、アルプスの小国に転落したオーストリアで、ハプスブルク帝国の文化や文学がどのように表象されてきたかを考察する。本講義は昨年度開講の同名講義を引き継いで行われますが、序盤(第一回から第三回まで)で基礎的な情報は繰り返し説明しますので、本年度からの参加でも理解に困難はありません。授業の到達目標19世紀末から20世紀初頭にかけてのウィーン社会を知り、その特殊性を踏まえて、この地に成立した文学や芸術作品を理解する。成績評価方法試験0%行いません。レポート70%学期末に、レポートを提出してもらいます。内容については、学期中に個別に相談に乗ります。平常点30%配布されるドイツ語テクストの読解と、授業への取り組みを評価します。その他0%上記二点で評価します。備考・関連URL取り扱うテクストについては、授業が始まってから参加者の希望に沿って微調整することがあります。科目名ドイツ文学講義1ModernedeutschsprachigeLyrikundLyriktheorie担当者名学術博士(フライブルク大)ペーカートーマス独語独文コース2単位秋学期木曜日2時限1年以上―――授業概要InderVeranstaltungwirdeinerseitseinÜberblicküberdieGeschichtederdeutschsprachigenLyrikgegeben,wobeiderSchwerpunktaufderneuzeitlichenLyrik(vomEndedes19.biszum20.Jahrhundert)liegt.ZumanderenwerdenaucheinigetheoretischeTexteüberLyrikdiskutiert,diedanachfragen,waseinGedichtüberhauptistundwieGedichtezuverstehenbzw.zuinterpretierensind.Methodischwirdsovorgegangen,dassdieSeminardiskussionimMittelpunktsteht,diedurchTeilnehmer-bzw.Teilnehmerinnen-Referateergänztwird.授業の到達目標DieStudierendenlernenwichtigedeutschsprachigeGedichtekennen,diezeittypischsindundaufbestimmteドイツ語ドイツ文学コース―171―

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