【文学研究科】2019年度シラバス
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科目名日本文学講義16中世宗教文芸論―梁塵秘抄法文歌の世界担当者名小島裕子日本語日本文学コース2単位秋学期水曜日2時限1年以上―――授業概要梁塵秘抄より、仏教にまつわる法文歌の歌の世界を繙く。平安時代の末、時の法皇であった後白河院は今様という歌謡の集梁塵秘抄を編纂した。そして、声わざの悲しきことはわが身隠れぬる後、留まることのなきなりと、消えゆく音声の宿命を嘆き、梁塵秘抄口伝集を執筆、これに添えた。今、わずかにその十分の一が現存するにすぎない梁塵秘抄であるが、平安時代後期の文化や思想を鮮やかに映し出す歌々で満ち満ちている。後白河院が後世に伝えんとした今様の魅力とは如何なるものであったか。撰述された今様のことばを具体的に味わいながら考えてゆきたい。現存する今様は、神歌と法文歌から成るが、後白河院自身が法文の歌、聖教の文(経典の教え)に離れたることなしと、その意義を表明している。学問の地平を押し広げ、歴史・宗教(経典)・美術(仏像)・音楽(声明)・法会儀礼などを含めた様々な分野の文献資料を用いながら、そうした法文歌の世界の奥底に眠る豊穣な宗教史の一風景を垣間みたい。講義では、私に心に響く歌を選び紹介。同時代の文献資料などを駆使しながら、歌に結実した時代の歴史・文化を味わい深く読み解いてゆく。後半は受講者の報告を手がかりに、資料の扱い方を含めた示唆と相互読解を深めるための場を持ちたい。授業の到達目標梁塵秘抄の法文歌に対する理解を深めるなかで、宗教文芸の魅力を知り、またいずれの文芸の読解においても避けて通れない宗教資料の種々や調べ方を身につける。大学院の講義であるので、講義の聴講のみならず、受講者自身が研究のテーブルに着くことで、研究能力は格段に向上する。そのための時間も設けるので、受講者は講義の聴講に並行して、自ら私選の今様一首選を提示し、当該歌の先行研究資料を整理し、報告(レジュメ作成・口頭発表)を行なって、文章化までの手順を学ぶ。この過程は、ゼミや研究会、学会などで必ず踏む方法であるので、研究者をめざす者としてのスキルアップとなろう。成績評価方法課題:20%。第3回に、受講者が関心をもつ今様一首選(今様と選歌の理由を示す)を提出。第4回に先行研究資料の作成法を提示。第5回に先行研究資料を提出。報告:30%。レジュメ作成・口頭発表。平常点評価:10%。講義に対する質疑、報告に対する質疑により、相互に読解が深まることに対する貢献度を評価の対象にする。レポート:40%。上記の過程は、ゼミや研究会、学会などで必ず踏む方法である。その最終段階として必須である原稿化を想定して書く。科目名日本語学講義3複文研究Ⅰ担当者名松木正恵日本語日本文学コース2単位春学期金曜日4時限1年以上―――授業概要本年度は、日本語学講義4と連続する形で、現代日本語の複文について取り上げる。一口に複文といってもかなり範囲が広く、いわゆる連用修飾・連体修飾の両面から考察していく必要があるが、最終的には、連用複文構文と連体複文構文の接点を探る試みについても紹介してみたい。複文研究は、格助詞・接続助詞・ヴォイス・テンス・アスペクト・モダリティ・引用・複合辞・文法化等の文法研究へも広がりを持つテーマであるため、個々の文法的要素が様々な関連を保ちつつ日本語表現を形作っている様を把握してほしい。春学期開講の日本語学講義3では、複文研究の前半部として、まず複文を概観し、その連続性を確認した上で、従属節の従属度について詳しく検証する。そののち、補足節(名詞節・引用節・疑問節)・名詞修飾節(格成分名詞修飾節・内容補充修飾節・相対名詞修飾節・付随名詞修飾節)について、これまでの研究史も随時参照しながら、個々の考察を深めていく予定である。複文を解明するには、様々な統語論的手法が必要となるため、この授業は、それらを実践的に学ぶ良い機会ともなろう。初めのうちは講義形式で行うが、次第に文献の輪読形式を中心に進め、演習と同様、関連論文の講読・資料収集・データ分析等も課す予定である。全体像を把握する意味でも、日本語学講義4と併せて受講することが望ましい。授業の到達目標日本語の文の諸相を考える上で無くてはならない複文の捉え方について、その複雑な全体像を把握すべく様々な角度から探求しつつ、関連領域に対する視野も広げていく。また、それらの過程で、様々な統語論的手法を実践的に学ぶことも到達目標の一つとなる。成績評価方法研究発表(50%)、レポート(20%)、および出席を含む平常点(議論への参加状況・作業状況等)(30%)を総合して行う。科目名日本語学講義4複文研究Ⅱ担当者名松木正恵日本語日本文学コース2単位秋学期金曜日4時限1年以上―――授業概要本年度は、日本語学講義3に連続する形で、連用修飾をするいわゆる副詞節を中心に取り上げる。複文研究は、格助詞・接続助詞・ヴォイス・テンス・アスペクト・モダリティ・引用・複合辞・文法化等の文法研究へも広がりを持つテーマであるため、個々の文法的要素が様々な関連を保ちつつ日本語表現を形作っている様を把握してほしい。秋学期開講の日本語学講義4では、複文研究の後半部として、連用修飾をするいわゆる副詞節を取り上げる。まずは、従属節として機能する条件節・時間節・目的節・様態節と、副詞節の下位項目を詳細に考察したのち、等位節・並列節にも範囲を広げていく。具体的に検証する表現は、従来言われてきた接続助詞だけに限らず、複合辞的表現や名詞性接続成分等、多様な表現に射程を広げつつ考察を深めていく予定である。日本語日本文学コース―100―

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