日本語教育研究科
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本名 生弥2019年3月修士課程修了2017年上智大学文学部国文学科を卒業後、当研究科修士課程に入学。広告表現への関心から「公共空間における掲示物の日本語」を切り口に、ユニバーサルな日本語コミュニケーションの実現を目指した基礎研究に取り組む。修了後の2019年 4月に総合PR会社の株式会社ベクトルに入社。PRコンサルタントを務めている。修士課程修了生藤原 恵美2017年3月修士課程修了1991年東京家政大学英語英文学科卒業。商社勤務を経て、家族に帯同して海外生活を送り、帰国後に日本語学校で教師を務める。仕事を続けながら2015年に当研究科に入学し、対話による実践授業への試みをテーマに修士論文を執筆。修了後の現在は、早稲田大学日本語教育研究センターで留学生に日本語を教えている。修士課程修了生15日本語教育の研究を通して得た言語への多角的な視点を強みに人々の心に届くコミュニケーションを追求 学部時代、国文学の学びを通して日本語教師の道に関心を持ち、大学院進学を選びました。当時の私は日本語教育を教室の中だけの狭い世界のものと捉えていましたが、日研に入りその考え方は180度変わりました。教室内にとどまらず社会のあらゆる分野に還元できる研究をすることを大目標に据え、 以前より抱いていた広告への関心を起点に、公共空間における掲示物の日本語に関する研究に取り組みました。 研究の過程では幾度も迷走し、回り道も重ねましが、根気強く進める中で、それまで散らばっていた点が1本の線に結び付いた瞬間がありました。試行錯誤の末に“腑に落ち切った” 快感を味わったあの一瞬は、生涯忘れないでしょう。一見、 語学や教育には関係のない「広告」というジャンルを入口に、最終的には日本語教育の分野だからこそ物申せる論文を執筆することができたと思います。それは、一緒に頭を抱えながらも最後まで私の興味に付き合ってくださった指導教員の先生をはじめ、周りの支えと励ましがあったからこそです。 研究をきっかけに広告業界を志望するようになり、修了後、戦略PRを中心に広告事業を展開する会社に入りました。広告の仕事は、世の中に情報を発信するコミュニケーションビジネスとして、あらゆる“言語”が軸となります。日研で培った、言語 を多角的に捉える視点と柔軟な思考を強みに、人々の心に 届くコミュニケーションの設計に励んでいます。自身が目指す日本語教育を真摯に考え続けた2年間が教師としての揺るぎない芯に 日研に入学したのは日本語教師になって10年目のタイミングでした。その前年に日研の公開講座に1年間通い、講義の内容や先生の助言を通して、日本語教育学の理論と自身の実践とが結び付く手応えがありました。それまで長く現場で感じてきた、学生と教師の間にあるズレや違和感について、もっと 真剣に研究してみたいと考え、修士課程入学を志望しました。 特に印象に残っている科目の一つが「日本語教育実践研究(9)」です。これは早稲田大学日本語教育研究センターで 留学生を対象に開講されている日本語科目「クリティカル・リーディング」を実習の場とした実践研究科目で、院生自らが授業デザインや教材作成、授業実習を担います。この科目を通して、私の中にあった教師の役割に対する固定観念が覆されたと同時に、学習する側の視点や考えについても理解を深められたことで、修士論文のテーマである「対話による実践授業への試み」の研究へとつながりました。 日研での2年間は、自らと向き合い「自分はどんな日本語教育をしたいのか」を考え続けた時間でした。その過程を経て定まった教育観は、日本語教育に携わる上での揺るぎない芯となっています。今後も学習者の支援者として、個々の学生にとってベストな教育を共に考え実践していきたいと思います。また、留学生だけでなく、仕事や生活で日本語を必要とする人への日本語教育にも携わりたいと考えています。

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