日本語教育研究科
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い じょんみ2009年9月修士課程修了2003年に韓国・東義大学日語日文学科卒業。2007年当研究科修士課程に入学。修士論文では地域の日本語教室を参加者の視点から考察した。現在、大学や日本語学校で留学生に、また企業で技能実習生に日本語を教える傍ら、都内でボランティアによる「親子日本語教室」主宰。修士課程修了生田中 伊式2018年9月修士課程修了1980年に東京外国語大学ロシア語学科を卒業後、NHKに入局。アナウンス室などを経て、2010年よりNHK放送文化研究所主任研究員として日本語の研究に携わる。2016年9月当研究科修士課程に入学。仕事と両立しながら修士論文に取り組み、2018年9月修了。修士課程修了生15日本語教育に携わる上で非母語話者である不安を自信に変えていける場所 韓国で日本語を学んでいた大学時代、将来は日本語を使う仕事がしたいと考えるようになりました。それまでの学習者の視点からではなく、教育の視点から見ることで日本語を極められるのではないかと思い、大学院への進学を決めました。 入学後、縁あって地域の日本語教室にボランティアで参加し始めたのを機に、このフィールドについて研究したいという気持ちが芽生え、「多様な参加者が地域日本語教室に集う意味」を研究テーマに選択。学習者とボランティアの両方にインタビューを行い論文にまとめました。日研には、年齢や職業など多様な背景を持つ人が、日本語教育という共通点のもと、対等に意見を交わし合える雰囲気や関係性があります。社会人になった今、その環境の素晴らしさを改めて感じます。 修士課程の2年間を通して、「非母語話者」や「外国人」を超えて、一個人としての自分と向き合う時間を持てたことは、いま日本語教師として仕事をする上で土台になっています。日本語学習者にとって私のような非母語話者日本語教師は、いわば身近な先輩でもあり、日本人相手には聞きにくい質問も率直にしやすいようです。また「○年でこのレベルまで話せるのだ」と、目標や励みにしてもらえることも利点です。留学生で日本語教育を学びたいと考える方は、日研への進学をぜひ検討してみてください。 日研は、自身が非母語話者である不安が、自信に変わるきっかけになる場所だと思います。回り道も糧にしながら納得がいくまで妥協せず考え抜く姿勢を大切に NHKのシンクタンクで仕事を続けながら、この2年間大学院生活を送ってきました。修士論文では、NHKのニュースサイト「NEWS WEB EASY(やさしい日本語ニュース)」を分析対象に、日本語学習者へのアンケート調査も含め、ことばの量的研究に取り組みました。研究では壁に突き当たることもありましたが、試行錯誤の末に最適解にたどりついたときの達成感は、何ものにも代えがたいと感じます。 日研の教授陣の充実ぶりは言うまでもありませんが、カリキュラムが多岐にわたり、選択の自由度が大きいこと、また、1つの講義で院生の数が10~15人程度と少ない点も魅力でした。同期や先輩と、一過性ではない人間関係を築けたことも大きく、実際にゼミの先輩たちとは今も情報交換を続けています。修了後の現在、コーパスや統計ソフトを使った日本語の分析作業に、日研での学びを役立てています。近く仕事が一段落するため、その後は、日本語教育の現場でこれまでの経験を活かしていくつもりです。 修士論文の執筆にあたり、指導教員の李在鎬教授からは最初に「点と点を結ぶ線を考えるのではなく、今は点をたくさん見つけるように」とご助言いただきました。これから研究に臨む皆さんも、テーマが決まるまでには紆余曲折があるかもしれませんが、回り道は無駄ではありません。納得のいくテーマに出会うまで考え抜くことを大切にしてください。

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