会計研究科
3/32

出していました。その中で、外国の方を含むさまざまなバックグラウンドをもつ人たちと出会えた収穫は大きかったです。根岸 多様な人と交流してコミュニケーション力を身につけることは、専門職の課題の一つですよね。特に企業では、対人折衝能力が強く求められますから。 もう一つ、専門職が陥りやすいのは「木を見て森を見ず」。専門領域だけを深く見るばかりでなく、自分が組織全体の中でどんな機能を発揮していけるか、という見方・考え方も重要です。関根 コミュニケーション力は、私も会計士に必要なスキルとして、第一に挙げています。すごくいい仕事をしているのに、伝え方が下手で損するケースもある。相手にわかるようにきちんと説明する能力は、最低限必要と考えています。 会計士の場合、守らなきゃいけない核の部分は時代を問わず不変だけれど、先ほど触れた社会からの期待は時代とともに変化している。その変化を見逃さずに応えていかなくてはなりません。根岸 一方で、今やデータサイエンスやAIの時代。それらの活用は、アクチュアリーにとっても自分の作業を効率化するという意味で大事だと考えます。資格の勉強と合わせてデータサイエンスを学ぶかどうかについては、mustではないが、betterだと思いますね。 少し前に会計士の仕事はAIに取って代わられるという記事も出ていましたが、その辺りはどうお考えでしょう?関根 私はAIが発達すれば、会計士は助かると考えています。膨大な情報の処理は、ITやAIにやらせる。でもテクノロジーに全部できるわけじゃない。人間の会計士はAIのさらに先を行く存在で、もっとテクニカルで難しい業務を担うことに価値があるんじゃないでしょうか。ただ、そこで私たちが難しい業務に偏りすぎては、「木を見て森を見ず」になりかねません。そこは気をつけないと。無限の可能性を信じて 自分の道を突き進む根岸 お客様ニーズが多様化・専門化している今は、時代が専門職を求めている。これから専門職を目指す皆さんには、一般企業の幅広い分野で活躍してもらいたいです。当社も専門職が達成感を味わえるようなチャンスの設け方や、評価・処遇を整えており、そのような企業は実際に増えている。専門職とうまく融合しないと、企業は生き残っていけませんから。関根 私は、よく「専門をもったゼネラリストでありなさい」と言うんです。例えば会計士にも個性があり、その個性を仕事に生かしている。それと同様に自分の専門性を個性として持ちながら、さまざまな人とゼネラリストのように接する。こういう姿勢は、早稲田の校風にも合っているんじゃないかしら。根岸 変わった人が多くて自由な早稲田の校風ですね(笑)。ただ、卒業してわかったのは、本当に幅広い分野に同窓生がたくさんいること。早稲田の縁だと話もしやすくて、すごく助かっています。関根 私もこれまでに心が折れそうになった時は、早稲田の仲間に相談に乗ってもらいました。いざという時は同胞が助けてくれるという心強さがありますね。根岸 そんな学校で学生時代にしか味わえない体験をしつつ、皆さんには尖ってほしいですね。早稲田らしく自立して、自分の考えをもって、無限大の可能性を信じて、力強く前に進んでほしい。関根 そうですね。自分自身を信じることは、プロフェッショナルを目指す上での入り口。若い頃の苦労は、振り返ると楽しい思い出になります。ぜひ思うように自分の人生を描いてください。今は時代が専門職を求めている専門領域を深く見るだけでなく多様な人とのコミュニケーションを1981年、早稲田大学理工学部卒業、明治生命保険入社。87年、日本アクチュアリー会正会員に認定。94年、自ら営業職に転じ、営業所長、商品課長、支社長などを経て、2009年、執行役営業企画部長。その後、常務執行役などを務め、13年より現職。明治安田生命保険相互会社取締役 代表執行役 社長根岸 秋男03

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る