会計研究科
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明治安田生命保険の根岸秋男社長と、日本公認会計士協会の関根愛子会長は、ともに早稲田大学理工学部で数学を専攻した同級生。そんな二人のトップ対談が2018年11月、同大で実現しました。異なる分野で専門性を突き詰めた二人の言葉の中から、今の時代に専門職を志すということの意味を探りました。自分の専門性に 信頼や期待が集まる根岸 当時の理工学部は9割が男子だっただけに、関根さんはかなり自立した闊達な印象。きっとキャリアウーマンになるんだろうなと思っていましたよ。関根 男性社会の中で違和感なく生活してこられたのは、理工学部のおかげです(笑)。当時の女子学生は就職難でしたが、私は外資系銀行に採用してもらえました。でも男女雇用機会均等法ができる前でしたから、やはり外資でも女性の活躍の場は少ない。これは何か資格が必要だと思い、数字が実務に役立つ公認会計士の資格を取得しました。銀行は約3年で退職し、監査法人へ転職したんです。根岸 僕は学生時代に学んだ数学を生かして社会の役に立ちたいと、専門職のアクチュアリーとして保険会社に入社しました。資格取得はその6年後。専門を極めたら、周りからの信頼度が高まり、その信頼が強みになって仕事を任される。部長や役員とも会話できる。しかもゼネラリストへの転籍も可能。僕は希望して営業に挑戦し、今はこういう立場です。関根 プロフェッショナルのメリットにつ いては私も同感で、社会から一定の期待を得られるので、仕事がやりやすいです。その分、大変な面もあるけれど、そこに やりがいも生まれます。とはいえ、監査 法人に入社して30年後、残った同期は1 割ほど。監査で学んだことを基盤に、一 般企業へ移る選択肢もあるからでしょう。 あと、専門職に男女の区別はなくて、出産・育児後も復職しやすい。これも女性からすると大きなメリットですね。専門領域は1本の「木」 大切なのは「森」を見ること根岸 思えば学生時代は、サークル活動で得たことの方が大きかったかもしれない。専門領域ではどうしても内向きになりがちだけど、サークルではみんなで話し合って行動に移す。それが積極性とか主体性のような前向きな仕事へ取り組む姿勢につながった気がします。 実は麻雀もよくやった。予見や仮説が必要なところが企画想像力とか、今日でいうデザインシンキングを鍛えてくれたようで、経営者としては麻雀をやっておいてよかったなと(笑)。関根 会計士にとっては、数学の論理的思考が非常に役立ちました。でも実は私も大学でバンドをやったり、英会話学校に通ったりと、学業以外にも色々と手をプロフェッショナルとして生きる─そのメリットや課題、心得は?アクチュアリーからキャリアアップした経営者と、銀行出身の公認会計士が、自身の歩んできた道を振り返り、専門職を志す後輩たちへメッセージを贈る。専門職に男女の区別はなく出産、育児を経ても復職しやすいいざという時は早稲田の同胞が心の支えに1981年、早稲田大学理工学部卒業。外資系銀行を経て85年に青山監査法人入所。89年、公認会計士登録。2006年から16年までPwCあらた有限責任監査法人パートナー。日本公認会計士協会常務理事などを歴任し、16年に女性初の同協会会長就任。関根 愛子日本公認会計士協会 会長SpecialReport02

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