第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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「応用言語学」の授業では以前から活用されていた、エジンバラ大学教授らによるオンデマンド講義。上田講師も現在まで利用しているが、学生の学力の変化に合わせて4年ほど前から活用方法を変更している。授業の進め方を検討することで、常に更新ができないオンデマンド講義でも十分に活用が可能だという。学生のレベルに合わせて、オンデマンド講義の活用法に毎年工夫を凝らすCourse N@vi以前から活用しているオンデマンド講義 教育学部の非常勤講師・上田倫史先生は、大学3、4年生を対象にした「応用言語学」の授業にオンデマンド講義を取り入れている。前期はエジンバラ大学のアラン・デービス教授が応用言語学の入門を解説する「Applied Linguistics」を、また、後期は同じエジンバラ大学のヒュー・トラッパー・ローマックス教授が言語学におけるデータ分析を解説している「Studies Language in Use」のオンデマンド講義を学生たちに視聴させている。 このオンデマンド講義の歴史は古く、講義を録画したのはすでに10年以上前のことと、上田講師は説明する。「いちばん最初は、テレビ会議システムを使って、講義を生で配信していました。ただ、イギリスと日本では時差もあって大変なので、その後、オンデマンド講義という形を取ることになりました。講義は、エジンバラ大学まで行って収録しました。当時は、まだCourse N@viがなくて、収録した講義は独自サーバーにアップしていましたね」。 当初収録した講義は、いずれも本編50分+質疑応答10分の、1本60分。その後、Course N@viの前身のシステムが早稲田大学に立ち上がった際に、追加でいくつか講義を収録したという。 「最初に収録した内容をさらに掘り下げたもので、エジンバラ大学の先生方に日本に来ていただいて撮影しました。このときは、1本の講義を4ユニットに分けたので、1本が60分でつながっているものに比べると、だいぶ使い勝手はよくなりましたね」 その後、早稲田大学にCourse N@viが導入されて、現在はCourse N@viから講義を閲覧するようになっている。 「Course N@viは、使い方がわかりやすいのと、大勢の人が一度にアクセスしても比較的スムーズにつながるのがいいところだと感じています」。授業で要点を解説してから、オンデマンド講義で理解を深める 上田講師によると、10年という長い間同じ講義映像を使い続けているのには、2つの理由があるという。ひとつは、講義内容が応用言語学の「定説」について解説しているということ。「理論が急に古くなることはなく、教職に就く人にとっては基礎知識とも言える内容です。最初のスタートが大学院生向けだったことや、アラン・デービス先生の講義内容は哲学的なところもあったりして、今の学生にとって難しい部分は確かにあるのですが、その分野を代表する先生による講義を聴ける機会はあまりないですし、内容自体に問題はないのでそのまま利用しています」。 もうひとつの理由は、講義を撮り直すことが難しいという現実的な問題だ。「いつかは新しい講義を撮り直すことになるのでしょうが、エジンバラ大学の2人の先生についてはすでに引退しているため、今の講義映像をすぐに変更することは考えていません。また、ハワイ大学の先生のオンデマンド講義もあって、時間に余裕があればこちらについても解説していますが、この先生もやはりすでに引退していらっしゃいます」。 ただし、オンデマンド講義の活用方法は昔のままではない。学生のレベルに合わせて、大きく変更している。 まず現在は、オンデマンド講義を視聴する前に、先に授業で1時間分のオンデマンド講義の内容について、背景知識などを日本語で解説する。授業後には、学生が各自Course N@viから該当する講義をオンデマンドで視聴。視聴した講義をきちんと理解できたかどうかについては、以前から使用している「レクチャーノート」を使って確認させている。学生は、講義の視聴とレクチャーノートの書き込みまでを自宅で行うことになる。「その次の授業では、講義を見てわからない点がなかったかについて質疑応答の時間を取って、理解を深めるようにしています」。 学生がオンデマンド講義を実際に視聴したかどうかは、個別にはチェックはしていない。「レクチャーノートやレポートなどを見れば、きちんと講義を見ているか見ていないかはわかるからです。ただし、事前の解説の授業だけを聞いても、講義を見ないと詳しいことはわからないシステムになっているので、基本的にはきちんと見てもらいたいですね」。 なお、Course N@viについては、オンデマンド講義の視聴だけでなく、授業での配付資料をPDF化してアップロードしたり、学生の課題提出にも活用している。「授業の配付資料は、毎年少しずつ変更を加えています。前年度の資料をコピーして変更し、アップロードしています」。08上田倫史教育学部非常勤講師

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