第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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さまざまな学生が学ぶオープン教育センターでイタリア語を教えるアルベリッツィ・ヴァレリオ・ルイジ准教授。学生ごとのレベルや事情に合わせて、効率的に学習を進められるように、2013年度春学期よりiPadで閲覧・利用できるデジタル教科書やTwitterなどのデジタルツールを導入した。導入直後の履修者の成績が上がるなど、すでに着実な効果を上げている。デジタル教材+携帯端末で個々のレベルに合わせた効率的な語学学習が可能に授業の課題解決と効率的な学習のために、デジタル教材を導入 2012年度よりオープン教育センターで、イタリア語入門・初級講座を受け持つアルベリッツィ准教授。初年度は、授業の形態や内容にどんな課題があるのかを把握することに努めたという。その結果見えてきたのが、「オープン教育センター」ならではの課題だった。  「オープン教育センターは、学部や学年の垣根を超えて科目を学べるのが特色です。ただし、それ故学生ごとのニーズやモチベーションにはかなり差があり、レベルにもばらつきがあります。また、学部の学生では専門科目の授業や就職活動が忙しくなると、語学の授業を欠席しがちになるケースも見受けられました。」 レベルの違いや時間不足などの問題を解消して、効率的に外国語を学習するにはどうすればよいか。授業に出られない場合に、授業外の学習で補う方法には何があるのか。検討した末にアルベリッツィ准教授が着目したのが、iPadやスマートフォンなどのポータブルデバイス(携帯端末)だった。「現在は、ほとんどの学生がスマートフォンやiPadなど、何らかのデバイスを保有しています。それを使えば、たとえば通学中などでも手軽に学習ができると考えました」。 2012年1月には、アップル社が教育分野をサポートする3つのツール――iBooks Author、iTunes U、iBooksをリリースし、語学学習にポータブルデバイスを活用するための環境も整ってきていた。iBooks Authorは、動画や音声などを含んだインタラクティブな電子書籍を作成するソフト、iTunes Uは、iPadなどiOS向けの講座配信アプリ。またiBooksは、iBooks Authorなどで作成された電子書籍を閲覧するビューアで、マルチタッチ対応をサポートしている。  「学生へのアンケートでは、スマートフォンはAndroid利用者のほうが若干多く、タブレット端末は利用者自体がまだ少なかったですね」。しかし、Androidは種類が多く逆にベースを絞りにくかったこと、またタブレット端末利用者はほぼiPadを保有していたことから、メインのツールをiPadとした。「もちろん、iBooks AuthorやiTunes Uの機能が非常に優れているという理由もありました」。 そして、2013年度の春学期の入門講座から、iBooks Authorを使って作成したデジタル教科書などを授業に導入した。学生が自分で学びやすい、インタラクティブなデジタル教科書 iBooks Authorで作成した「デジタル教科書」は、単に紙の教科書をデジタルに置き換えたものではないと、アルベリッツィ准教授。「ウィジェットというツールを使って、インタラクティブな要素を入れられることが最大の特徴です」。 たとえば、テキスト中で学生がわからない単語があったら、それをタップすると単語の意味や例文が表示される。「画像や音声、映像も入れられるので、ヒントを言葉で出すのではなく、関連する画像や音声、動画で見せることもできます」。また、気になる箇所をマーカーで引いたようにハイライト表示したり、デジタル上でノートを取ったりすることも可能だ。さらに、音声認識ソフトのDragon Dictationで自分が読んだテキストの発音が正しいかをチェックしたり、音声朗読ソフトのVoice Dream Reader Liteによる聞き取りもできるようにした。「音声ソフトを使って、日本人が苦手な発音の練習も自習できるようになったことは非常によかったと考えています」。 アルベリッツィ准教授が、デジタル教科書でイタリア語を学ばせたいと考えた理由には、従来の「紙の教科書」の問題も大きいという。 「大学で使うイタリア語の教科書は、どれも欧米人向けです。たとえば、テキストのごく最初に出てくる文法的な説明のない自己紹介文でも、そこには単数形・複数形、女性名詞・男性名詞、人称など難しいポイントが含まれています。欧米人なら母国語との比較でなんとなく類推ができますが、日本人などアジア人には難しい。それがひとつの学習の妨げになる。でも、単語をタップして意味や説明を表示できたり、画像や映像を組み込めるデジタル教科書であれば、その難しい部分の理解を助けることができます」 授業では従来の教科書を利用しているが、デジタル教科書を併用することで、より効率的にイタリア語を学ぶことが可能になった。 「学生のレベルが違っていても、それぞれが自分のペースで勉強ができ、その分、私は学生が座る机の間を回って、一人ひとりの学生の疑問に答えるなど、より丁寧な指導が可能になりました」 授業中・授業外でさまざまに活用できるデジタル教科書だが、現状では、iPadを保有している学生の絶対数は多くない。ただ、「この取り組みを評価していただいた大手電気通信事業者が、秋学06アルベリッツィ・ヴァレリオ・ルイジオープン教育センター准教授

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