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Course N@viを活用し、グループワークで授業を活性化

八百幸大 高等学院 教諭

高等学院では、大学と同様に入学と同時にWaseda-net IDを取得できるようになっており、Course N@viの機能も利用が可能だ。特に情報科においては、Course N@viを積極的に授業に組み入れていこうという流れがあり、2013年度より本格的な導入への試みが実施されている。

教え込むだけの授業から、自主性を引き出す教育へ
八百幸先生

八百幸教諭が担当する情報科の授業では、2013年度よりCourse N@viのBBSやチャット機能を利用したグループワークを取り入れている。従来は特に1年生の授業は座学で展開されることが多かったが、八百幸教諭はそのような教育法に行き詰まりを感じていたという。「科目の性格上、教え込むだけの授業ではなく、自分たちで調べてその内容を共有するという作業が効果的な場合があります。みんなで勉強させるにはどんな仕掛けを作ったらいいのかを考えた結果、自学自習のきっかけとしてCourse N@viを使ったグループワークを導入することになりました」。

たとえば、著作権の項目を扱った授業では、著作権法違反に当たるのか否か微妙な事例を5つ用意し、4~5人のグループで調べた結果を発表させるという試みを行った。教科書、著作権データベース、文科省から出ている冊子、凡例データベースなどあらかじめ資料を指定し、それを調べてまとめるというものだ。

授業時間外の話し合いに BBSやチャットを活用

グループワークを進める過程において、教室内で実際に話し合う以外に授業時間外にも情報交換ができるよう、Course N@vi上に専用のBBSとチャットを用意して使わせることにした。最初は授業中に実際に使わせながら使い方を説明し、各グループで決めたテーマや役割分担などをBBSに報告させた。「単に用意しただけでは生徒は利用しないと思ったので、まず授業内で1回利用させて使い方やインターフェイスに慣れてもらうことが狙いです」。

使ってみて便利だと感じたら積極的に使えばいいというスタンスで、以後の利用は義務化していない。彼らが日頃から私用で使い慣れているLINEなどのSNSを利用するケースもあるようだが、それも禁止はしていない。「ただし、Course N@viを使っていれば、自分たちで解決できないことがあった場合に、教員がアドバイスすることもできます。生徒たちにはそれを伝えているので、それも含めて各自が使いやすいツールを選んで利用すればいいと思っています」。

教員側としては、Course N@viのBBSやチャットを使っていれば話し合っている内容を確認できるため、進捗具合や生徒たちの考えていることを把握できるというメリットがある。「あまり萎縮しないで自由に使ってもらいたいので、教員が割って入ることはなるべくせずに、静かに見守るようにしています」。

BBS使用上のマナーについては、情報モラルの項目を教える際に注意点を伝えているためか、争いになるようなこともなく、特に問題は生じていないという。「グループによってはほとんど利用しないケースもあるので、欲を言えばもう少し積極的に使ってもらいたいという気はしますが、おおむねうまく利用してくれているようです」。

授業で扱う重要用語についてのBBS。1つの用語に対して複数の生徒が調べた内容を投稿しており、用語辞典として使うこともできる。
【授業で扱う重要用語についてのBBS。1つの用語に対して複数の生徒が調べた内容を投稿しており、用語辞典として使うこともできる】

こうしたディスカッションを3~4週間続けた後、グループごとに教室で発表を行う。1学期は模造紙などを使って発表したが、2学期はPowerPointを使ってスライドを作り、そのファイルを事前にCourse N@viにアップロードするように指示した。「Course N@viに提出させれば手間なくデータを1箇所にまとめられるので、発表当日の投影準備もスムーズにできて便利でした」。

グループ活動の導入で、教室に活気が出てきた

このようなグループワークを取り入れた結果、生徒たちは非常に活気が感じられるようになったという。「一番違うのは、教員の話を聞いているだけだとみんな疲れた顔をして授業を受けていたのが、自分たちで議論して発表するというやり方を導入したことで、普段見られないような顔を見せてくれるようになったことです」。

評価方法についても、以前はペーパーテストだけで行っていたが、2013年度は発表の内容も反映させている。「ペーパーテストではあまり点数が取れなくても、こうした発表が得意な生徒もいるということがよく分かりました。今までは見つけられなかった生徒の力を評価してあげられるようになったのもよかったと思います」

このようなグループワークは、各学期に1回ずつ実施している。「単元によっては、数学的な内容になるため座学で収まるものもあります。一方で情報モラルのようなジャンルは生徒一人ひとりで見解が違うでしょうから、グループワークでそれをぶつけ合って結論を出してもらうのがいいと考えています」。

アンケート機能を利用し、用語の理解度をチェック

この授業では、Course N@viのアンケート機能を利用して学習前後の理解度の違いを調査するという使い方もしている。たとえば、ある単元に入る前に、そこで覚えてほしい重要な用語について50~100程度ピックアップし、「よく知っている」「名前は知っている」「知らない」の3段階で回答させる。授業後に再び同じアンケートを行い、その理解度の変化を見る。集計結果は自動計算されてグラフ化もされるため、生徒に公開して見せるのにも説得力がある。

また、アンケートで取り上げた用語を一人3個程度ずつ割り振り、それぞれが調べてBBSに書き込むという課題も行っている。提出した内容は全員に見えるので用語辞典のような使い方ができるようになる。1つの用語に対して複数の生徒が調べるようになっており、自分以外の生徒が書いた内容も参考にすることで学習を深める効果もある。

レポート機能の類似度判定機能を使うと、自動で剽窃チェックができる

八百幸教諭は、2年生の授業でもレポートや課題の提出にCourse N@viを活用している。「以前はメール添付で送らせていましたが、私が見落としてしまう心配もあり、管理が面倒でした。Course N@viなら自動的に一箇所に集まっていますし、締め切りの設定もできるので管理が楽になりました。類似度判定の機能を使えるのもとても便利です」。

類似度判定機能とは、提出されたレポートの内容を、インターネット上の文書やCourse N@vi内にこの機能を使って提出された他の文書と比較し、似た文章が使われている箇所があるとマーカーで色がついた状態になり、引用元も表示される機能だ。

「生徒がみな同じようなことを書いていると、その部分が真っ赤になります。同じ資料の同じ箇所を参照しているのが分かるので、指導の参考になります」。八百幸教諭の場合は、剽窃を見つけて減点するという目的ではなく、生徒がどういうものを参照にしているかを把握することで、他の資料を紹介するなど次回以後の指導に活かすという使い方だ。

同校の情報科の授業では、授業を進めるための基本スキルとしてWordやExcelの実技試験も行っているが、その基本的な使い方は授業中には扱わず、副教材を与えて自習させている。それをフォローするため、操作方法を説明する動画を作成しCourse N@viに資料として掲載しておき、必要のある生徒は各自自習の参考にできるようにもしている。練習問題を作っておいて取り組ませることもある。

最大のメリットは即時のフィードバック

八百幸教諭は情報科の教員ということもあり、Course N@viには以前から関心を持っていたという。1年ほど前から個人的にさわってみていたが、本格的に授業に導入したのは2013年度からだ。「Course N@viを授業に使ってみて感じたメリットは、ディスカッションを促進できたことと、即時にフィードバックが得られることです」。BBS、チャット、アンケートなど、いずれも今まではっきりと見えなかった生徒たちの理解度や考えが可視化され、それを指導につなげていけるようになったということだろう。

クラス担任としては、各種の連絡や調査、伝達事項の確認にアンケートを使うなど、授業以外のクラスの管理でもいろんな使い方ができそうだと感じたという。「実際に使ってみると、いろいろな発想が出てきます。今後は教員のみんなでいろいろな教材を作ってCourse N@viで共有することで、どんどん質を向上させていければいいと思っています。」

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