情報化推進レター

早稲田大学の学生・教職員の皆様に情報化推進計画のお知らせを配信させていただきます 。

教員コラム

コンピュータ同士による協働作業の困難さ

金光 永煥
メディアネットワークセンター 助教

DrKanemitsu

私達は、家族・友人・知人等、様々な人々と日々接しており、集団生活なしでは充実した人生を送ることはできないでしょう。様々な人々と接することは、新たな価値観や情報を得て、後に自分の糧にしていくことにもつながりますが、一方でそれらを「共有することによって喜びを得る」「助け合うことによって目標を達成する」という側面もあるかと思います。例えば皆で楽しみを共有すること・役割の分担が、これら2つの側面に当てはまります。情報技術によってこの2つの側面を実現・普及させることは、多様化している情報サービスの世界が、より現実の世界に近づくことにつながります。その結果、情報サービスが、日常生活にますます欠かせないものとなるでしょう。ここでは、これら2つの側面(情報共有・協働作業)の実現に対する現在の取り組みについて説明します。

私たちは現在、テレビ、新聞、雑誌、書籍のような一方的な情報提供媒体だけでなく、ノートPCやスマートフォン等でインターネットへアクセスすることにより、地理的な問題を意識することなく何らかの情報共有を図ることができます(例えばSNSやチャット等)。また、複数のユーザが同時に一台のコンピュータ内の資源(OS、記憶領域等)を利用することにより、仮想的に「間借り」させる仕組みも存在します。情報技術の発展により、物理的な媒体ではできなかった「互いに面識の全く無い者同士による情報(資源)共有」が可能となりました。特に、SNSによって情報を共有することは今や私達にとって当たり前な存在となりつつあります。

一方、「協働作業」については、データ解析のために世界中のPCへ解析データの断片を配布して解析処理を行わせることにより、あたかも皆で助けあって1つの問題に取り組んでいるように見せる仕組みが存在します。しかし、このような仕組み・サービスはごく一部の人々(企業、研究者)にとっては作業の効率化という理由で利用されていますが、一般の人々にとっては日常で利用する機会はあまりないでしょう。その理由としては、共同作業の内容がサービス運営側によって予め決められたものであり、本当に自分が行なってほしい作業は依頼できないことが挙げられます。そのため、協働作業を目的とした仕組みに対する取り組みとしては、一般の人々に受け入れられるまでには至っていないのが現状です。他の理由としては、実現の困難さが挙げられます。言うまでもありませんが、作業を依頼しようと考えるのは私達人間です。どのような作業を依頼するかは当然、人によって多種多様です。前述の「情報共有」であれば、共有するモノは「データ」という画一的なモノとして容易に扱うことができるでしょう。しかし、協働作業となれば、「データ」ではなく「処理そのもの」であり、多種多様な処理をどのように表現し、そしてどのように扱い、各作業をどのコンピュータに割り当てるのかを決めるのは至難の業です(そのため、協働作業に参加したPCに処理を割り当てるというボランティアに基づいた処理の割り当てが主流です)。作業の内容によっては、複数のPCよりも一台で行った方が効率的であるものもあるでしょう。さらには、PCが多すぎても少なすぎてもさほど作業効率化ができず、結果的に「ほどほどの数のPC」が最も効率的である、という場合もあるでしょう。このように、作業の内容によって様々な処理形態を想定しなければならず、結果的に全ての場合に対応するのは困難であると言えます。様々な作業内容に応じて「どのような処理形態であれば確実に効率化できるのか」を自動的に決める仕組みがあれば、世界中の人々が自由に作業を世界中のコンピュータに依頼でき、「世界中のコンピュータ同士で助け合う」ことが当然の出来事となるでしょう。

以上のことから、情報化社会において情報の共有だけでなく、協働作業の仕組み・サービスもより普及すれば、私たちはコンピュータをより頼りにするでしょう(某映画のように、機械に支配されないようにしなければなりませんが)。コンピュータによって協働作業をどのようにすべきかを考え、そしてコンピュータに教えるのは、結局私達人間なのです。人間同士の作業(例えばプロジェクト単位の仕事)で適材適所に人材を割り当てるのが困難であることと同様に、コンピュータの世界でも同様の課題があるのを知っていただければ幸甚です。

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