情報化推進レター

早稲田大学の学生・教職員の皆様に情報化推進計画のお知らせを配信させていただきます 。

Course [email protected]事例紹介

教場でのチャット利用が、有効な情報共有ツールに

砂岡 和子
政治経済学術院 教授

Course [email protected]の機能の一つである「チャット」は、一般のインターネット上でもよく利用されているオンラインツールだ。通常は、離れた場所にいる者同士がリアルタイムに文字で会話をするために使われるこのチャット機能を、砂岡教授は教場内の授業で利用している。そのユニークな活用法の効果についてお話を伺った。

中国語の聞き取りテストをチャットで実施

DrSunaoka

砂岡教授が最初にチャットの利用を思いついたのは、中国語の授業における聞き取りテストへの応用だ。中国語は文字と音声が直接リンクしない言語であるため、初級レベルでは、まず発音と漢字表記の関係を覚える必要がある。その点、発音をアルファベットで示した「ピン音」をローマ字入力で漢字に変換するPCでの入力法に慣れることは、音声と漢字との関係を覚える訓練にもなる。

そこで、PC教室を利用し、聞き取りテストの解答を各自でWordを利用して入力させていた。それを現在は、チャットの画面上で入力させるようにしているのだ。

その一番のメリットとは、チャットの画面では入力した文字が他の学生にも見える点なのだという。人より早く正解を投稿したいというモチベーションが上がる上、先に投稿された他人の解答を参考にすることもできる。「解答がいくつも投稿されると正解が8割ぐらいを占めてくるので、よくわからなかった学生も正解らしきものがわかってきます。実は、他人の解答から学ぶというのも重要なポイントで、教員から正解を教えられるよりもずっと大きな教育効果があるのです。」

読み上げた単語やフレーズは、中国語で書き取るか、もしくは日本語訳を書いてもよいことにしている。「うまく聞き取れなかった場合も、誰かが投稿した日本語訳がヒントとなって正解が分かることがあります。逆に、漢字変換はできても意味がわからなかった場合のフォローにもなります。」

Wordを利用して提出させるとフィードバックが次週の授業になるため、そのタイムラグにより教育効果が薄れてしまいがちなのに対し、その場で正解がわかるという点も、チャットを使うメリットだ。

以前はこれと同じことをCourse [email protected]の小テスト機能を使って実施したこともあった。「小テストでは他人の解答が見えないので、全員が正解にたどりつくまでに私が何度も繰り返して発音する必要がありました。チャットなら他の学生の解答を参考にできるため、私は1回発音しただけですみ、授業効率がかなりアップしました。」

ただし、チャットの場合、いち早く正解を投稿する学生が固定化してしまう傾向があり、得意でない学生にとってはやる気を失ってしまいがちだ。「その辺りが現状の課題です。学生のレベル別にグループ分けするなどして、すべての学生がモチベーションを保てるような工夫が必要と考えています。」

質疑応答もチャットを使うと効率的

中国語の授業では、チャットを質疑応答にも利用している。「40人を超える規模のクラスともなると、一度に質問を受け付けることができません。同じような質問が重複した場合でもチャットなら一目瞭然で目に入るので、まとめて回答することもでき、非常に効率的です。」

初級のクラスでは、自分の質問したい部分の中国語がうまく発音できないため、口頭ではうまく質問できないケースもある。その点、文字なら確実に伝えることができる。初級クラスでは、あらかじめテキストの内容を中国語で入力したデータを配付しておくという工夫もしている。「これを使えば質問したい部分をコピー&ペーストして流用できます。入力の負担を減らすことで、質問の時間を有効に使えるようなりました。」

さらに、質疑応答にチャットを使うもう一つの効用として、質問内容が共有できる点を挙げる。「優秀な学生ほど質問の質も高いので、相互に閲覧すること自体、とても勉強になっていると思います」。

自由チャットは授業の最終仕上げに行い、中国人留学生にも参加してもらう。ネイティブとの自由チャットは、散漫に短文が続きがちだか、教員がうまく指導することで、覚えてほしい文型に誘導したり、新しい単語をコミュニケーションの中から覚えさせる効果があるという。「対面ではなかなか中国人と会話できない学生たちも、チャットだと話しやすいようです。チャットで会話を積み重ねた経験が、実際にオーラルで話す前段階の訓練としても役立っています。」

講義と並行したチャットで情報共有効果

こうした経験を経て、今年から「中国の社会」というCCDLの授業でもチャットを活用し始めた。この授業は、中国人講師を中心としたオムニバス形式で講義を行う。履修する学生はネイティブの留学生が1/3、バイリンガルに近いが読み書きはあまり得意ではないというレベルの学生が1/3、残りの1/3は留学経験があり、ある程度の会話ならできるという日本人学生という構成になっている。

講義はすべて中国語で行われるため、中国語の得意でない学生たちのために、講義で使われる専門用語をフォローする目的でチャット機能を使うことにした。「学生からこの言葉がわからないと質問されたら、私や中国語の得意な学生が教えてあげるというように、通訳補助ツールとしての利用を想定していました。」

ところが、実際に使い始めてみると、こうした語学力のフォロー以外にも、思わぬ効果があらわれた。「講義の中で出てきた内容について誰かが質問をすると、ネイティブの学生が関連情報をインターネットで検索して紹介するなど、学生間で情報を共有できるツールとなったのです。」

ときに話が脱線し、チャット上で雑談が始まることもあるが、かえってこうしたやりとりの中で学生同士が相手のことを知り、お互いに支え合いながら授業を盛り上げていく雰囲気が生まれたともいう。「言語的にも文化的にもバックグラウンドが違う学生が集まっているこの授業の中では、一種のコミュニケーションツールとしても大いに役立つということを感じました。ですから授業と関係のない発言もある程度許容しています。」

チャットの発言が講義のテーマからあまりにも逸れてくると、必ずそれを軌道修正する学生が出てくるそうだ。「教員が特に注意をしなくても、話が横道に逸れたままで終わることはなく、また授業のテーマに戻っていきます。学生たちがそういう相互自浄力も持っているということは新鮮な驚きでした。」

こうした現象の背景には、教場という共同体で講師、学生がチャットを行っていることと関係しているようだ。「熱心に講義する講師の話を理解したいと願う学習者同士が、チャット上で協力関係を結ぶ際、挨拶代わりにちょっと脱線するのでしょう。でも学生たちも間近で講師の熱意を感じているので、本題に戻ってくるのかもしれません。そこが、顔の見えない離れた場所で行うチャットとの違いだと思います。」

授業終了後に、講義の担当教員にチャットのログを見てもらうこともある。「自分の講義に対して学生がどのような反応をしているかを知る、いい記録になっているようです。」

ポイントは、自由に発言できる空気を作ること

このようなチャットの活用を通して砂岡教授が感じたのは、自由に発言できるムードを作ることが、学生たちのモチベーションを上げる結果につながるということだ。「チャットは授業効率を上げるという意味でも大きな利点があるのですが、あまり効率を前面に出すと、かえって学生のやる気を削いでしまう面もあります。学生が自由に情報共有やコミュニケーションをするためのツールとして開放しておくことが、チャットを有効利用するポイントの一つかもしれません。」

また、授業にチャットを導入してみたことによって、砂岡教授自身の認識にも変化があったという。「学生と対等にチャットを経験してみて、教員の側も自己開示を行い、協調学習に参加することで、学生が近づきやすいと感じ、勉強する意欲をかきたてるのだということを実感しました。」

チャットで得た経験を活かし、PCを使わない教場でも、話題を共有し、互いに補完しあいながら学ぶ授業を試みたところ、学生との交流が非常にうまくいったそうだ。

毎年新しく出会う多くの学生たちを前にして、教員が学生一人ひとりの能力やモチベーションを把握するのは容易ではない。「語学のように個別の能力差がある授業では、チャットは特に有効だと思います。個別対応と協調学習が効率的にできるので、基本的なスキルを全員にくまなく提供するには、最適のツールなのではないでしょうか。」

Course [email protected]デビューへの一言!
1人対40人という関係でも、チャットを使うことによって、学生たち一人ひとりのモチベーションを知り、それを活かした指導をすることができます。こんな便利なツールを使わない手はないと思いますよ。
チャット画面
教員が中国語を発音し、学生各自がチャット聞き取った内容を画面上に入力する。うまく聞き取れない箇所も、他の学生の回答を見て正解を知ることができる。
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