情報化推進レター

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教員コラム

数学が苦手なあなたへ

文学学術院 准教授
木村 好美

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少なく見積もっても、文系学生の半数は占めているであろう数学が苦手な人にとって、悲しく、残念なことに、私たちは数字から離れて生きてゆくことはできません。

数学が苦手で進路を私大文系にし、入試ではなんとか数学から逃れることができても、特に社会科学系の分野では大学の講義で数学や統計学の知識が必要になります。政治経済学部や商学部のみなさんの中には、「こんなはずでは無かった…」と思っている人もいるのではないでしょうか。

大学卒業後も、仕事や生活の場面で、私たちは様々な数字と向き合うことになります。研究の世界もそうです。前任校で、奈良時代の流通経済史の研究をしておられる先生から、当時の借金に関する文書の分析を計量的にできないか、という相談を受けたことがあります。社会科学の分野だけでなく、言語学の分野でも、遺跡発掘の分野でも、統計学に基づくデータ解析の手法はしばしば用いられています。

数字は苦手だからこの部署(仕事)は勘弁してください、とは言えないでしょうし、住宅ローンを組む時、保険を選ぶ時をはじめ、何らかの意思決定の場面において、損をしないために、数字に振り回されないために、そして騙されないために、私たちは基礎的な数学や統計学の知識とセンスを身につけておいた方が良いでしょう。このことは、社会人向けの数学や統計学の書籍数の多さからも明らかなように思います。

1963年に出版され、映画にもなった小説「猿の惑星」(映画も良いですが、小説はもっと面白く、おススメです)では、主人公(人間)のユリス・メイラはフランス語が通じない惑星で、支配者であるチンパンジー(猿)のジラにピタゴラスの三平方の定理の図形を描き、自らが知性を持つことを伝えました。もはや―というよりも1963年時点ですら、木の枝でバナナをつつき落とす程度では、知性は証明できないのです。これはもう、諦めて数学を勉強するしかありません。

そして、避けて通れないのならば、働きだして、時間が無くなってから数学や統計学の勉強を始めるより、学生である今、その基礎を身につけておいた方が良いのではないでしょうか。各学部でも、様々な数学や統計学に関する科目が提供されていますが、オープン教育センターの「数学基礎プラスα・β(金利編)」や、メディアネットワークセンターの全学共通副専攻「データ解析」はじめ情報科学やソフトウェア学に関する多くの科目も、文系学部の学生向けに懇切丁寧な講義が展開されていますので、ぜひ多くの方に受講していただきたいと思います。

かく言う私も生粋の私大文系で、そもそも勉強もあまりしなかった女子高生であったため、大学院のゼミでホワイトボードの∫(インテグラル)を見た時、「よっ、久しぶり!」と声を掛けたくなるくらい、数学から遠ざかっていました。大学院に入った後、人生のなかで最も勉強し、そして社会調査法やデータ解析を学ぶために統計学の知識が必要となるのですが、意外なことにあれだけ嫌いだった数学を学ぶのが、さほど苦痛では無くなっていました(そんなことを言っていられない、というのもありますが…)。どうして高校生の時、数学から逃げたのだろうと不思議に思うくらいです。

だからこそ、数学が苦手なあなたへ。数学的センスを必要とされる場面は、今後ますます増えてくると思います。気分を変えて(騙されたつもりで、でも構いません)、「入試のための数学」に向き合うのではなく、「暮らしに活きる/生きていくための」数学に向き合ってみませんか。新たな視点で数学に向き合うことにより、きっと、その面白さに気づくはずだから。

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