情報化推進レター

早稲田大学の学生・教職員の皆様に情報化推進計画のお知らせを配信させていただきます 。

教員コラム

文系学生のためのソフトウェア学

早稲田大学 メディアネットワークセンター
助教 鄭 顕志

身の回りの様々なものがコンピュータ化され、我々の生活をサポートしてくれるようになってきました。携帯電話は一人一台はあたりまえ、家のリビングを見渡せばテレビ、HDレコーダ、エアコン、キッチンを見渡せば電子レンジ、炊飯器、冷蔵庫、外にでかければ車、カーナビ、自動改札機など無数のコンピュータによって我々の生活は支えられています。普段の生活以外でも建設、製造、運輸、金融、医療等々、様々な業種の企業が業務を効率よく行うために情報システムを導入しています。このようにコンピュータを用いた情報システムが社会に浸透するに従い、コンピュータを制御するソフトウェアの需要が高まり、多量のソフトウェアが開発されるようになりました。

開発されるソフトウェアの量が増えると、必然的にそれを作るソフトウェア開発者も多く必要になります。しかし、大学でソフトウェアについて専門的に学んでいる情報系の学生数は、社会で求められるソフトウェア開発者数と比べて圧倒的に少ないのが現状です。では、ソフトウェア開発の現場ではどうしているのかというと、ソフトウェア開発に関する知識や経験が十分でない文系学生も数多く採用し、各社で一から研修をしてソフトウェア開発について教えています。しかし、数ヶ月程度の短い期間で"使える"ソフトウェア開発者に育てるのは非常に困難です。優秀なソフトウェア開発者を数多く育成するにはどうすればよいか、という問題が大学や企業で認識され始めてきました。

早稲田大学でも、2008年度からテーマスタディ(全学共通副専攻)「ソフトウェア学」(http://open-waseda.jp/gakubu/minor/pdf/software.pdf)を設置し、ソフトウェア開発に関する教育を体系的に行う試みを始めました。テーマスタディという言葉はまだなじみが薄いかもしれません。テーマスタディとは、自分が所属する専攻(主専攻)に加え、他の分野の専攻(副専攻)を学ぶことが出来る履修プログラムです(http://open-waseda.jp/gakubu/minor/shikumi.php)。各テーマスタディに指定された科目を一定数履修することで、他の分野の専門的な知識を身につけ、より広い知見を得ることが出来るでしょう。

「ソフトウェア学」では、ソフトウェア開発技術の習得を目標としています。ソフトウェア学はメディアネットワークセンターが提供する科目を中心にカリキュラムが組まれており、ソフトウェアシステムの基礎知識(プログラミング、ネットワーク等)に加え、データベース、マルチメディア、セキュリティ等の専門的な分野を扱う講義を取りそろえています。最終的にはソフトウェアがどのような工程を経て作られているかについて学び、プログラミングだけでなく、ソフトウェアの分析、設計といった実践的な開発方法についても学びます。

2008年度から始まったソフトウェア学ですが、2009年度からは、プロフェッショナルズ・ワークショップ(http://www.waseda.jp/jp/pr08/081008_p.html)を科目として取り入れることを検討しています。プロフェッショナルズ・ワークショップとは、企業(社会人)と学生が一緒になって、企業が抱える問題を解決するというワークショップです。例えば、2008年度にNECと共同で行われたワークショップでは、モバイルSuicaの新機能を、NECやJRの方達とともに学生が、学生ならではの目線で企画、立案しました。このような実際に企業が扱っている問題を対象とすることで、より実践的なソフトウェア開発技術を身につけることが出来るでしょう。

このようにソフトウェア開発に関する技術を身につけることで、ソフトウェア開発の現場で役立つ人材であったり、"ソフトウェアのことがわかる法律家"、"ソフトウェアのことがわかる政治家"といったような、"ソフトウェアのことがわかる"という強みを持つ専門家となれば、皆さんの大きな強みとなることでしょう。

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