教務部副部長 商学学術院教授
横山 将義
一昨年秋以降、立場上、オンデマンド等の「教育の情報化」という問題に触れる機会が多くなった。とくに昨年3月、北京大学、清華大学、中国人民大学を訪問し、オンデマンド授業に関する意見交換の場に立会い、この分野への関心を持ち始め、いつの間にか引き込まれることとなった。手始めに高校生向けのオンデマンドコンテンツを作成したところ、鹿児島に住む高校生から「商学部への関心が高まった」というメールを受け取り、オンデマンドの有用性を実感した次第である。
昨年10月、教育の質の向上を目的として、FD(Faculty Development)推進委員会が設置され、全学的なFD推進への取り組みが開始された。これまでにもFDに相当する事例は数多くある。一例として、同一科目については、共通のシラバスやテキストの作成、共通テストの導入等である。現在のところ、FDへの取り組みは、各箇所、各教員の実践例を情報交換することからはじめ、利用可能で効果的な事例を他の箇所や教員が取り込むことにとどまっている。
このような中、教育効果を高めるために個々の教員レベルで取り組むことが可能な事例として、オンデマンドやCourse N@viの活用が挙げられる。「教育の情報化」の一環としてのオンデマンドやCourse N@viは、学生の自学自習を促し教育の質の向上を図るという点で、FD推進の有効な手段になり得ると考えている。今般、「Waseda Next 125」において、「全学基盤教育」という概念が打ち出され、学生の自学自習の必要性が提起されている。「入学前教育」「初年次教育」「教養教育」等のさまざまな場面で、情報化の活用が有効な教育手法の1つになることが指摘されている。もっとも、これには教員の取り組みに加えて、職員の強力なサポートも必要である。また、科目登録ガイダンス等、各種の情報の提供にあたっては、職員自身がオンデマンド・コンテンツを作成することも要請されるであろう。「教育の情報化」をFD推進と関連づけるという視点が必要とされている。
ところで、現在、大学は「教育の情報化」の一環としてCourse N@viの利用促進にも取り組んでいる。昨年度秋学期、担当の職員から説明を受け、早速、講義の場で活用してみた。たとえば、講義資料のアップやレポート課題の伝達である。従来、教場で配布していた講義資料、講義中に伝達していたレポート課題をCourse N@vi上にアップすることにより、講義を休んだ学生を含めて全受講生に情報が行き渡る。また、これまで講義中にレポート課題の正解を説明していたが、これをCourse N@vi上にアップすることで受講生に自習を促す効果を発揮する。試験の正解や解説についても同様である。ゼミにおいては、ディスカッションの場として活用することができる。学生の間では「先生はCourse N@viにハマリ過ぎ」といわれていたようであるが、これは嬉しい噂話である。教員サイドでは、試験の評点や平常点(出席、レポート等)の管理にも利用できる。
なお、個人的な感想をいえば、Course N@viは、外国語やゼミ等の少人数クラスにおいて利用の頻度がより高いのではないかと思われる。その場合、とくに外国語担当者の多くを占める非常勤講師に対して、いかにしてCourse N@viの普及を図るのかという問題に直面する。教員室や事務所における説明、ポータルオフィスにおける対応等が考えられるが、これはFD推進に非常勤講師をどこまで巻き込むかという問題とも関係する。余談であるが、Course N@viを延伸して学生が卒業後も利用できるシステムになれば、大学との連携がより一層強化されるのではないかと考えている。