情報化推進レター

早稲田大学の学生・教職員の皆様に情報化推進計画のお知らせを配信させていただきます 。

教員コラム

早稲田大学におけるリメディアル教育

瀧澤武信
政治経済学術院教授

Remedial Educationはいわゆる「補習」のことである。早稲田大学では高校までに学んできたはずの教科の復習(確認)や、学部教育の前提として仮定されているが、現実の高校課程では時間をかけて教えられていない部分の学習(導入教育)を含んだ意味で使われている。筆者は、「数学」に関して2002年度から、「統計学」に関して2006年度からオープン教育センターが行っている一般入試以外の入学制度による新入生向けの「導入教育」のコーディネータを担当している。「数学」の内容は2002年度まで行われていた(いわゆる旧課程の)「数学I」「数学Ⅱ」の復習であり、「数学I」に関しては、関西学院高等部の丹羽時彦教諭との共同研究で同教諭作成の「放課後の数学」を早稲田大学用に改変したコンテンツを利用して行っており、「数学Ⅱ]に関しては、早稲田大学高等学院数学担当教員との共同研究で作成したコンテンツを利用して行っている。「統計学」に関しては、政治経済学術院井上淳助教授の協力により瀧澤が開発したコンテンツを利用して行っている。なお、数学は「WBT (Web-Based Training)」、統計学は「Oic(On-Demand Internet Class)」の仕組みをそれぞれ用いている。ここでは「統計学導入講座」について概略を紹介する。

統計学導入講座は、(I)1変量の記述統計、(Ⅱ)2変量の記述統計 (Ⅲ)推測統計入門の3編を作成する予定で開発を進めている。現在は(I)のコンテンツが揃い、運用している段階である。近々(Ⅱ)のコンテンツを揃える予定になっており、その後(Ⅲ)を作成する。(Ⅰ)と(Ⅱ)では 目の前にあるデータ(標本)の特性値(統計量)の計算を練習し、(Ⅲ)では標本の源泉である母集団の特性値(母数)の推定や検定を練習出来るようにする計画(比較的単純な計算で出来るものに限定する予定)である。この講座の目的は、次の通りである。受講生にとっては、まず、高校時代に数学の一部として説明を受けた(はずの)統計学の用語や平均や分散などの計算法を確認し(入学試験ではしばしば除外されるため、高校では説明をほとんど行わないケース、いわゆる「未修」状態に近い場合も見られるが、その場合はここで新たに学ぶことになる)、次に、データが予め整理されている(度数分布表で与えられる)場合の計算法(重み付け平均など)を学習する。

これにより学部の講義でそれらの用語が出てきたり、計算方法の説明がなく、計算結果を利用した説明を受けたりする際に戸惑わないような準備が出来る。また、学部の教員にとっては、学生に当然知っておいてほしいが、講義時間でその説明をすることが難しい(受講生の高校時代のバックグラウンドが異なり、理解度がばらばらなために、導入部分では個別対応を迫られるが、その講義にとっては、それが必ずしも本質的なものではないので、多くの時間を割くことが出来ない)ため、学生がその講義の内容を理解したかどうか心配になる、ということや、多くの講義で同じことを言わなければならない(学生にとっては、やさしいことを何度も聞かなければならない)ということをある程度避けられるメリットがある。また、統計学の入門コース担当者の場合、演習の一部にこの講座を利用させれば多少時間の節約が出来る、という付帯的なメリットも生ずる。

2006年2月14日~3月12日に各学部の一般入試以外入学者404名から申し込みがあった2006年度の導入教育講座では、(I)1変量の記述統計として、次の(1)~(6)を実施した。

  1. 統計学の概要、この講座の学習範囲の説明、解答方法の説明
  2. 母集団と標本、定性的データと定量的データ、連続量と離散量
  3. 集団の代表値 -平均、中央値、最頻値-
  4. 度数分布表、ヒストグラム、度数分布表から求める集団の代表値
  5. 集団の散らばり度合い -平均偏差、 、標準偏差-
  6. 度数分布表から求める分散、標準偏差、重み付け平均

また、講座に関して、Oicの機能を用いて、「小テスト」および「アンケート」を行った。

実施結果の概要は、次の通りである。1度でも講座を受講したもの:343名(84.9%)、1度でも小テストを受験したもの:259名(64.1%)、全講座を受講したもの:143名(35.4%)、全小テストを受験したもの:55名(13.6%)、最高得点:151点(2名) (満点は153点)である。また、アンケート回答者:238名であった。

15回(全小テスト)を受験したものの平均得点は135.58であり、88.6%の 得点である。100点未満は2名であった。

アンケート結果(全体)
  • 内容は
非常に易しい易しい普通分かり難い非常に分かり難い
44人192人369人175人21人
5.5%24.0%46.1%21.8%2.6%
  • 説明は
非常に易しい易しい普通分かり難い非常に分かり難い
124人379人232人58人8人
15.5%47.3%29.0%7.2%1.0%

これによれば、難易度は普通で、説明は分かり易かったという傾向が言える。

  • 費やした日数
1日2日3日4日5日6日7日8-10日11-14日15日以上
1人3人4人10人6人6人9人10人7人36人
1%.13.3%4.3%10.9%6.5%6.5%9.8%10.9%7.6%39.1%
  • 費やした時間については
1時間 未満1時間以上2時間未満2時間以上3時間未満3時間以上6時間未満6時間以上12時間未満
0人1人5人19人35人
0%1.1%5.4%20.7%38.0%

12時間以上24時間未満24時間以上36時間未満36時間以上48時間未満48時間以上100時間未満100時間 以上
17人8人5人0人2人
18.5%8.7%5.4%0%2.2%

 これによれば、15日以上かけ、6時間以上12時間未満程度費やしたとの傾向を見ることができるが、ばらつきが大きいようである。受講状況、小テストの得点、アンケート回答状況とその評価、はいずれも良好なものと言える。なお、2007年度も同様の導入講座を実施することになっているが、出来上がり次第(Ⅱ)2変量の記述統計も加えて実施する。

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