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オピニオン

No.240 早稲田大学eスクールでwell being!

早稲田大学eスクールの誕生

 早稲田大学人間科学部通信教育課程(eスクール)は生涯教育の充実を目的とし、スクーリングを除き、全ての課程をeラーニングで行う日本初の通信教育課程として2003年4月にスタートしました。そして、2007年3月に完成年度を迎え、53名の第一期の卒業生を世に送り出しました。後に述べますがこの数値は驚異的なものであり、通信教育に対するイメージを一変させるものです。さらに、この卒業生のうち17名が大学院に進学していることを考えると、早稲田大学eスクールは高等教育機関におけるe-learning利用の先進的な成功事例ということができます。

 2007年5月12日に早稲田大学eスクールは成果報告会を早稲田大学国際会議場で開催しました。約250名の来場者を迎え、坂元昂先生の基調講演に引き続き、成果報告、そして「eスクールを基盤とした従来型学部教育からの脱却−eスクールの挑戦−」と題して挑戦的なテーマでシンポジウムを開催しました。このシンポジウムにはeスクールの関係者全員、つまり、学生(通学制、通信制)、教育コーチ、事務局、教員がシンポジストとして登壇し、それぞれの立場からのeスクールへの熱い思いや将来について議論を行い、eスクールの成長の様子や現状の問題点を踏まえた将来の夢について共有することができました。来場者の方々にはeスクールがまさに全員参加の手作りのシステムであること、そしてそれがeスクールの最大の強みであることをご理解いただけたのではないかと考えております。

eスクールのもつ驚異的な数値

 この成果報告会に合わせて「eスクール4年間のデータ集」を発行し、eスクールに関する様々なデータを整理致しました(このデータ集を希望される方は早稲田大学eスクールまでご連絡ください)。このデータ集からはeスクールの成長の様子が読み取れることは言うまでもありませんが、高等教育機関におけるインターネットを用いた学習環境(広い意味でのe-learning)の導入に関して多くの示唆を提供していると考えられます。国内外において高等教育にe-learningを導入している事例は多く見受けられ、今後も増え続けると思われます。しかし、真に成功した事例は稀少であるというのが一般的な知見です。例えば、卒業率について見てみますと、5%程度というのが常識的な数値であると言われています。しかし、eスクールにおいては4年間で卒業した学生は53名(その内、17名は大学院へ進学)であり、これは入学時の学生数(169名)の32%、中途退学者等を除いた在籍者数(135名:2007年3月現在)の39%に相当し驚異的な数値であると考えられます。eスクールは社会人の生涯学習をその大きな目的にしていることから卒業に要する標準的な年数は6年であると想定していることを考えますと、6年間での卒業率は約80%近くまで伸びるものと予測しております。つまり、継続率の高さは特筆すべき点であると考えられます。このような点からもeスクールは真に成功した事例であると考えることができます。

 では、その成功要因は何か。これはいろいろ考えられますが、決して高機能で高価なLMS(Learning Management System)を導入したわけでも、リッチな学習コンテンツを高額の予算で作成したわけでも、何か特別な理論に基づいて教材作成や組織の仕組みを構築したわけでもありません。それは、eスクールに人間科学部の全教員が例外なく参画したことと、安定的な運用が保証可能な運用方法の研究・開発・実行に心血を注いできた点にあります。特に、教育コーチ制度の導入、企業との強固な連携がそのキーとなります。その例を示します。

 早稲田大学eスクールの目標は、ICT(Information Communication Technology)を用いて、従来の学部教育(通学制)と同等もしくはそれ以上の質の教育を提供することにあります。eスクールでの基本的な学習形態は講義資料のダウンロード、オンデマンドの講義映像での学習、BBSで学習内容についての議論、レポート提出といった極めてシンプルなものです。しかし、この学習環境の中に教育コーチという学生に近い立場の専門家が介入することにより、学習内容は高度に個別化されます。教育コーチは学生の学習を専門家として補助すると同時に、BBS上での議論などの協調学習が促進されるよう導きます。つまり、eスクールは個別学習と協調学習をバランスよく取り入れた学習効果の高い新しい”学び”の場を提供しているということができます。学生諸君は、この新しい”学び”場に積極的に参加され、新たなキャリア形成、さらなるスキルアップを実現されようとしているのです。結果として、学生諸君の自律的な学びが生まれ、それが成長していく様子を目の当たりにすることができます。まさに、質の高い学びの環境を学生のみならず教職員も実体験をすることができるのです。そして、この実体験は教員の自己組織的なFD(Faculty Development)にも結び付くのです。

将来構想! eスクールでwell being

 人間科学部の基本理念は「well being」すなわち「より良く生きる」ことの追求です。心豊かに、より健康的に、より幸せに生きるとはどういうことか、またそのためにはどうしたら良いかということを研究するのが、人間科学部に課せられた課題です。これは現代社会に最も求められているテーマの一つです。人間科学部は自らが具体的にそのような問題を見出し解決を図るという問題解決能力の育成に努めています。eスクールで学んだ学生諸君は自律的な学びを通してその能力を確実に習得し社会で早速実践されていることと思います。

 eスクールはICT(Information Communication Technology)を用いて通学制と同等もしくはそれ以上の質の高い教育を提供することを目的に、全教員が日夜研究・開発・実践を行って参りましたし、今後もそれはさらに強く明確なものになることを確信しています。そして、世界に向けて大きく成長・発展し、次世代の大学教育に関する様々な情報をフィードバックし、多くの方々と新たな大学教育の夢を共有していきたいと思います。

 最後に、早稲田大学eスクールの設立に大きく貢献をされて来られました野嶋栄一郎先生(当時の学部長)、西村昭治先生(当時のeスクール教務担当教務主任)に敬意を表するとともに、eスクール事務局の皆様、技術スタッフの皆様、すべての教職員、教育コーチ、そして何よりもeスクールに入学し充実した学生生活を通して多くの貴重な情報をフィードバックしてくださったすべての学生の皆様に感謝の意を表したいと思います。

(2007年5月22日更新)


※この特集はasahi.comに2002年10月〜2008年3月まで掲載されたものです。
※掲載内容を早稲田大学と朝日新聞社に無断で転載することを禁じます。

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