「これがサイエンスだ!」2019夏合宿(7月25日(木)〜27日(土))

 7月25日(木)から27日(土)に本庄キャンパスで、授業では扱えない専門性のある学習を体験し参加者に進学や将来について新たな視点をもってもらうゼミ合宿が行われました。 生徒たちは学年の枠を超え、昼間は数学AB・地学・物理パートに分かれ各教科ごとに活動し、夕方は数学科成瀬先生により特別講義「面積の測れない(?)図形」、2日目の午後には早稲田大学とサイトライセンスを契約したMathWorks 社のご協力で希望者対象に特別講義「MATLAB講習会」にてアルゴリズム開発、データ解析、視覚化、数値計算のためのプログラミング環境を体験しました。

 数学Aパートは、グレブナー基底の理論部分の学習とグレブナー基底の実用上の問題への応用についての考察を行いました。理論部分では環のイデアルやグレブナー基底の定義、グレブナー基底の持つたくさんの良い性質、グレブナー基底を求めるためのアルゴリズムを学習しました。また、地図の塗り分け問題・嘘つき問題・四独(サイズの小さい数独)をグレブナー基底を求めることで解く方法を学習しました。最後にグレブナー基底を用いた重心の存在の証明を参考にして、初等幾何の定理を一つ選択し、その定理をグレブナー基底を用いて証明しました。生徒たちは様々な問題を多項式の言葉に翻訳し、そのグレブナー基底をPCを用いて求め、出力を読み解くと答えが得られるという一連のプロセスを楽しんでいました。 

 数学Bパートは、フィボナッチ数列に関する諸問題について研究を行いました。具体的には、フィボナッチ数列やトリボナッチ数列の逆数和の逆数の整数部分がフィボナッチ数やトリボナッチ数の差でかけるという先行研究を元に、これらの結果をテトラナッチ数列の場合に拡張することを試みました。実際に数値計算をすることで、予想を定式化し、ある条件のもとでは予想を解くことができました。生徒たちも朝から晩まで議論、試行錯誤を繰り返したことで、研究することの面白さや奥深さを体験できたのではないかと思います。  

 地学パートは、地下の流動挙動を予測するシミュレータの開発に取り組みました。まずはじめに、プログラミング環境を構築し、数値計算に用いられるプログラミング言語であるFORTRANの基本(do文、if文など)を学びました。その後、生徒たちの手で流動を表現する数式を導出・整理し、プログラムに書き込みました。学生たちは、初めて取り組むプログラミングの考え方に頭を悩ませながらも、真剣に取り組んでいました。プログラムが正しく動いた時の喜びはひとしおでした。生徒からは、プログラミングの手軽さとその構築の繊細さを感じたという感想が聞かれました。

 物理パートは、X線による天体の観測技術、顔認識や音声認識を有するロボットプログラミングの技術について考察しました。X線による天体の観測では、ソフトを利用して実際のデータを画像化し観察した後ブラックホールの大きさを計算しました。ブラックホールとペアになっている恒星軌道(連星系)やX線によるデータから、ブラックホール半径「シュバルツシルト半径」を求めました。ロボットプログラミングでは顔認識と音声認識の精度を実際にプログラミングの体験を通して確認しました。なお、今回利用したロボットの実機写真については提供企業より許諾できないとのことで掲載していません。

最終日にはまとめとなる合同発表会を参加者全員で行いました。広大で自然豊かな環境でのフィールドワーク、講義やワークショップ、宿泊がすべて学内で行うことができるのは本学院ならではであり、生徒達もいつも過ごしている本庄キャンパスが研究活動の場となることや、チームで課題解決をすることなど、最終日の発表に向けて新鮮な気持ちで意欲的に取り組んでいました。

期待を上回る生徒たちの頑張りに感銘を受け、生徒のさらなる可能性を感じることができたとても実り多い活動となりました。

担当講師:
 数学Aパート : 太田洋平 教諭
 数学Bパート : 根本裕介 教諭
 地学パート  : 藤井すみれ 非常勤講師
 物理パート  : 大塚未来 教諭  薮 潤二郎 事務長