H先生のキノコ写真講座
 今までの試行錯誤でわかってきたノウハウです。
 学院生諸君は、掲載しているK先生のデジカメ講座と合わせ、授業時あるいはレポート・論文の資料のためにデジカメで写真をとるときの参考にして下さい。
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Contents 1.撮影の前に
2.ピンボケしないように
3.寄り方と構図
4.虫の目線で
5.物語の一場面のように
6.研究資料としての写真
7.Photoshopでの加工
1.撮影の前に
  1. デジカメの電池残量を確認しましょう。いざ、藪の中で苦労して珍しいキノコに遭遇しても「あっ、電池がない」、この状況はよく経験することです。
  2. デジカメのスペックで画素数がアピールされがちですが、200万以上あれば問題ないと思います。ちなみに、私は300万画素のデジカメをもう5年以上使っています。デジカメの設定で写真のpixel数を設定できます。大きくするとキレイですが、容量が大きいためメモリーを圧迫し撮影できる数が限られます。中程度(2000×1500、600KB 程度)で十分です。
  3. 基本は接写モード(チューリップボタン)接写するときにはズームは使いません。また、ファインダーではなく液晶画面で被写体を確認するようにして下さい。カメラによっては被写体の位置とファインダーに見えている位置が写した後で異なる場合があります。寄れる近さはカメラの能力によります。
  4. フラッシュは使わないようにしましょう。接写でフラッシュを焚くと影響が大きく、画像が明るくのっぺりと平面的になってしまいます。フラッシュボタンを数回押して×にしておきましょう。
  5. 熟練者であればマニュアルモードでも結構ですが、AUTOモードでも十分いいものが撮れます。
フラッシュを焚いて撮ったヤニタケの写真 フラッシュを焚かないで撮ったヤニタケの写真
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2.ピンボケしないように
 写真においてピンボケや手ぶれは厳禁です。明るさや色彩ならば後で加工できますが、ボケやぶれは直せません。
  1. 一般に半押しで中央の被写体にピントを合わせ、合った段階でそのままシャッターを押すことになります。
  2. 接写の場合、ピントを合わせられる限界の近さはカメラによって異なります。通常5センチ〜15センチくらいです。寄って、半押ししてピントが合わなかったら少し離れてもう一度半押ししてみましょう。寄れる近さをカタログで確認しておくといいと思います。
  3. 窓ガラス上にある優曇華(うどんげ)の花(カゲロウの卵)やネットの少し向こうにいる小さな虫などのように、どうしてもピントを合わせられない場合があります。このときは被写体までの距離を概算して、同じような距離にある別の対象に一度半押ししてピントを合わせ、半押ししたままあらためて被写体を狙う、という手があります。
  4. 接写ではちょっとの手ぶれも写真に出てしまいます。ふせぐために一番確実なのは、カメラを地べた、あるいは石の上などにおいて写す方法です。高価ですが接写用の三脚もあります。それができない場合は、左手でカメラの下からレンズを抱えひじを胸につけ、右手でシャッターを押す、というようにできるだけ固定して写すことです。
  5. 携帯電話のカメラを接写モードで使う場合も、持っている右手の手首を左手で固定し、両肘を胸につけるだけでだいぶ手ブレをふせげます。
  6. 念のために同じ写真を2度3度撮っておくことが重要です。デジカメのよさは撮っても気に入らなければすぐ捨てられるところです。遠慮せずどんどん撮りましょう。
上の写真はキノコがピンボケしている。カメラの液晶ではよく写ったように見えて安心して帰って、パソコン上で拡大したところボケててがっかり、という話は結構あること。
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3.寄り方と構図
 キノコや料理のように、人間の視点から下にあるものの場合、我々は特に工夫することなく、つい上から見下ろして写真を撮ってしまいがちです。しかし、上から見下ろした形で撮ってしまうと、遠近感や陰影が乏しく、まったりとした写真になり深みがなくなります。できるだけ「奥行き」を出すように工夫しましょう。
  1. 地面を写すのではなく、背景を入れるように努力しましょう。
  2. 背景が入ることにより、遠近感が出、奥行きが出ます。
  3. 落ち葉や木の葉などが入ることによりキノコの大きさが把握できます。
  4. キノコのヒダや軸などの特徴が見えるようになります。
 接写の場合、できるだけ寄ることが原則ですが、被写体で画面いっぱいにしてしまうとまた面白くない写真になってしまいます。
 上の写真は少々寄りすぎです。下の写真に比べ、写真から得られるキノコの「情報」が少ないことに着目して下さい。写真から得られる情報が多くなるように工夫しましょう。
    上下とも同じキノコだが、見た印象が全然異なる。下のほうが写真から得られる情報が格段に多い。 上下のキノコとも同じムラサキシメジ。上のキノコは大きいようにも見える。大きさを同定する対象が少ないからである。
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    4.虫の目線で
     我々にとってキノコは、食べられるその一部が興味の対象であり、マニア以外の人には腐朽物やジメジメした場所にある汚いもの・踏み潰すものでしかありません。しかし、地べたを這い回る虫や小哺乳類にとってキノコは見上げるものであり、雨をしのぐものであり、食料でもあり、森のお友達のようなものでしょう。そのような目で見た方が、キノコの存在感や特徴が見えてくると思います。
    1. できるだけローアングルで撮影しましょう。キノコが美しいのは雨後なので、跪いたり、腹ばいになるのはつらいのですが、ここは覚悟しましょう。汚れてもいい服装で臨みましょう。
    2. 傘の裏から光が透過する状態はキノコの最も美しい姿の一つです。特に傘の薄いキノコではそれを狙って撮ることがコツです。
    中途半端なローアングルだと、「訴えたいものがわからない」写真になりやすい。
    傘の光の透過が美しい。
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    5.物語の一場面のように
     キノコは一本だけぬっと立っている場合もありますが、小さいものが群生していたり、落ち葉の下から出てきたところだったり、その状況は様々です。せっかく撮るのだから、見る人が好感を持てるようなホノボノとした作品にしましょう。
    1. 見つけたらすぐに撮るのではなく、被写体を様々な角度から見て面白く見える方向を探しましょう。
    2. 一本もののときでも、周囲の木の葉、落ち葉、木の実も同時に見て面白く見える方向を探しましょう。
    3. キノコを擬人化したとき、何か物語の一場面のように見えないでしょうか?
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    6.研究資料としての写真
     芸術作品や個人的趣味として撮るのならばともかく、通常はレポートや論文に用いる資料として撮ることが多いと思います。そのためには撮った写真に資料としての要素も持たせなくてはなりません。写真で訴えることのできるキノコの生物的な資料要素としては以下のポイントがあります。楽しく美しい写真の中に、論じたい内容を示す要素をうまく含めるように努力して下さい。
    1. 傘の表の特徴、イボ(テングタケなどに多い)、スジ、粉っぽさ、色の変化、傘の形、つや、ぬめり(ナメコなど)など
    2. 柄の特徴、ツバ(柄の途中に刀の鍔のようなものがある場合がある)、ツボ(柄の根元が壺のようなものから出ている場合がある)、ササクレ、スジ、形状など
    3. ヒダの特徴、放射状、網状(イグチ)、迷路状、ヒダの密度、またはない場合(ヒダナシタケ)など
    4. 触れたときの特徴、色変化、液体が出るなど
    5. 繁殖形態、胞子の拡散方法(ヒダによる、噴出(ホコリタケなど)、グレバなど
    6. 腐朽材の変化(ヒダナシタケ類の場合、白く腐朽する菌と茶色に腐朽する菌がある)

    この菌が白色腐朽菌であることが確認できる写真
    柄に膜状のツバが確認できる写真例
    ヒダの特徴がわかる写真例 ハツタケが触れると緑青色に変わるという特徴を示すためにわざと触れてみた写真
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    7.Photoshopでの加工
     デジカメで撮った写真をそのままレポートや論文に貼ってはなりません。ましてWebに用いるなど言語道断です。その理由の一つは「重い」ということですが、もう一つの理由として加工してさらにいい写真に仕上げるためです。ここではPhotoshopを用いた加工の基本を述べます。必ず以下の事項は行うようにして下さい。
    1. 被写体が写真全体に比して小さく、周囲が余分な場合は、必要な部分をトリミングします。
    2. 画質調整で、最低「自動レベル補正」を行いましょう。慣れてきたら「レベル補正」「色補正」「明るさコントラスト補正」などを行い、調整します。
    3. 「ファイル」→「Web用に保存」でJPEGを選択し(画質は用途に応じて決定)、画像の大きさを決定します。
    左は元画像、右はレベル補正をしている。陰影が深まり、奥行きが出ていることに着目
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