早稲田大学本庄高等学院数学科授業方針

受験数学は, 主に問題解法の技術を身につけることにあるが, 我々の数学の勉強法で, それ以上に大切なことは「考える数学」を身につけ, 「数学をする心」を培うことである. もともと数学は純粋な理論体系で, 概念の学問である. 概念を規定する定義や公理系だけが土台であるから, それらをはっきりと把握しなければならない.
これからの世の中で役に立つ新しい数学は, 受験数学とはかなり性格の違ったものである. 本当に役立つ数学は, すなおで平凡な考えの中にあり, それを確実に身につけることが, 数学を勉強するときの大切な心得である. 数学を恐れる必要は少しもない.
数学の専門家になるつもりのない人でも, 新しい数学の大要はつかんでおいた方が望ましい. 近年まで, 数学は理工系学問に応用されるだけであったが, 最近では自然科学や工学ばかりでなく, 社会科学, 例えば, 経済学, 経営学, 社会学の方面にも新しい数学の成果や方法がどしどし取り入れられ, 広く応用をみるようになってきている.
本学院では, 第1学年に数学Ⅰと数学A, 第2学年に数学Ⅱと数学Bと総合的学習A, 第3学年の理系志望生徒に対して数学Ⅲと数学Cを必修選択として履修させる. また, 第3学年を対象とした選択科目として, 文系進学者用に「文系のための数学Ⅲ」, さらに高度な内容を学びたい生徒用に「記号論理学入門」, 「解析学入門」などを開講している.

数学科カリキュラム

必修科目の単元の紹介

1年次
数学Ⅰ
◇式の計算(整式, 整式の除法, 分数式, 無理式)
◇方程式と不等式(2次方程式, いろいろな方程式, 不等式)
◇関数とグラフ(2次関数, 2次関数の応用, 分数関数, 無理関数, グラフの対称移動)
◇平面図形と式(直線, 円, 不等式と領域)
◇三角関数(三角比, 三角関数, 加法定理)

数学A
◇集合
◇場合の数
◇順列・組合せ
◇二項定理
◇確率と期待値
◇論理と集合
◇指数関数・対数関数

 

2年次
数学Ⅱ
◇三角関数(加法定理とその応用)
◇整式の微分積分
◇関数の極限
◇連続関数
◇微分(分数関数・無理関数・三角関数・指数関数・対数関数などの微分)
◇微分法の応用(関数の増減, 極値, 凹凸)

数学B
◇平面のベクトル
◇行列式
◇行列
◇統計

総合的学習A
◇命題と論理記号
◇論理命題
◇述語と量化子
◇証明
(総合的学習Aでは早稲田大学本庄高等学院の数学科の教員が作成したオリジナルテキスト『論理と証明』を用いて授業を行っている.)

 

3年次
数学Ⅲ
◇微分法の応用(関数の増減, 極値, 凹凸)の続き
◇不定積分(置換積分, 部分積分, 三角関数・有理関数・無理関数などの積分)
◇定積分(いろいろな定積分の計算, 面積, 体積)
◇微分積分の応用(数列, 級数, 曲線の長さ, 区分求積法)

数学C
◇行列の応用
◇空間のベクトル
◇媒介変数表示と極座標
◇確率と確率分布

 

3年選択科目の授業概要

◎記号論理学入門
「考える」ということは, 重要である. 本科目では, 「論理的に考える」ことを, 記号論理学の初歩を学びながら試みる.
目標としては, 考えたことや主張したいことを論理的に表現する技法や, 論証(証明)の仕方を学び, そして論証の構造を論理記号を用いて分析し, その論証が妥当であるかどうかをチェックできるようになることである.
記号論理学は, 数学や論理計算機科学をはじめ, 哲学や言語学, 法学など多くの分野において, その基礎としてますます重要になってきている.
本科目では, これらの分野を勉強しようとする人たち, 特に理工学部, 法学部, 文学部に進学したいと思っている人たちに役立つ基礎を提供するだろう.
内容は, 概ね次のとおりである.
・トゥルーミンの議論モデル
・論証の妥当性
・形成言語の使い方
・論理記号の使い方
・真理の木の方法(タブローの方法)
・数学における証明の仕方

◎解析学入門
理工学部などでは, 数学, 特に微積分を道具として使うことが多く, 学部の1年では, 微積分の初歩を学んでいる.
本科目は2年までに学んだ微分積分や, 3年の数学Ⅲよりやや高度な内容(理工学部の1年で学ぶ微積分の一部)を学習しながら, より計算力を高めることを目指している.
具体的な授業内容は, 微分(対数微分法, n次導関数を含む), ロピタルの定理(ロルの定理の応用, 極限), テイラーおよびマクローリンの定理(微分を利用して, n回微分可能な関数を整関数で近似する), 微分(有理関数, 無理関数), 微分方程式(変数分離形, 定数係数線形1次, 定数係数線形2次)などである.

◎複素関数論入門
1年次に複素数を学習するが, 複素平面や複素関数などの内容は学習しないことになっている. しかし, これらの内容は, 理工学部や教育学部理科系学科に進学する学生にとって, 高校時代に抑えておきたい知識のひとつである.
そこでこの科目では, そのような複素数を使う数学に深く踏み込む. 具体的には次のような内容を扱う予定である.
・複素数を視覚的に見る「複素平面」(極形式, ド・モアブルの定理)
・変数を複素数にした「複素関数」
・複素関数についての微分積分

◎文系のための数学Ⅲ
経済や経営などの社会科学系の分野において「使える数学」を目標として, 理論よりも応用に重点をおいた授業を展開する.

◎応用確率統計学入門
回帰分析と主成分分析の2つの統計手法を説明する. 前者は, 例えば, 飼主の体重と犬の年齢から犬の体重を予測する方法で, 後者は, 5教科の点数からその人が理系向きか文系向きかを判断する方法である.