2010年9月21日
比較法研究所にようこそ
所長 田口守一
今日、比較法研究は、新たな段階を迎えています。近代の日本法は、西洋法の継受法として出発しました。したがって、日本法の研究にとり外国法研究は必須のものでしたし、その事情は今日でも続いているといえましょう。比較法研究所には、現在、外国法研究をベースにした共同研究として15のプロジェクトがあり、学内外の研究者によりそれぞれ活発な研究活動が展開されております。その研究成果は、比較法研究所の機関紙である『比較法学』で常時発表されています。
しかし、今日という時代は、法の世界でもグローバリゼーションをすすめ、また、インターネットの利用が日常化したことで、外国法に関する最新情報の入手も極めて容易にしました。そこで、このような外国法情報のなかで日本法のアイデンティティーを確認することも、比較法の重要な任務となってきました。比較法研究所のプロジェクトとしても、日本法の研究が進められ、その研究成果も『比較法研究所叢書』という形で公刊されています。また、この研究は、必然的に、日本法の発信という活動に連動します。以前から発行されてきた英文の“Waseda Bulletin of Comparative Law”に加えて、英文ニューズ・レターである“Claw News Letter”の発信さらにウエブ・サイトにおける日本法の最新情報の英文発信にも鋭意取り組んできました。これらは、世界各国が日本法への理解を深めるために重要な役割を果たしているといえましょう。
さて、世界のグローバリゼーションは、比較法にさらなる課題を求めていると思われます。それは、各国固有法間の共通項の探求あるいはそれを超えた共通法の形成ということです。国際法の分野を除けば、このような共通法の探求は、まだ緒についたばかりと思われます。共通法が形成されれば、それと各国の固有法との組み合わせにより、世界の共通課題に法的に取り組むことが可能となりましょう。しかし、このような比較法研究は各国相互の共同作業を必要とし、また、相互の固有法に対する理解が前提となってはじめて可能となります。このような比較法研究への取組みは、日本が今後真に世界の中でその役割を果たすために重要なことと思われます。また、実務法曹が手にする法律学も、グローバルな通用力をもつものでなければなりません。広く世界を踏まえた法律学は、実務的にも重要な課題なのです。
もっとも、外国における日本法に関する情報はまだまだ限られているのが現実です。日本法の発信は、経済の世界に比べて、驚くほど遅れているのです。このような現実に直面したとき、共同作業としての比較法研究を進めることは容易なことではありません。しかし、幸い、早稲田大学比較法研究所は、すでに、中国社会科学院、精華大学法学院、メルボルン大学比較法国際法研究所、デューク大学ロースクール、マックス・プランク外国・国際刑法研究所、マックス・プランク知的財産・競争・租税法研究所、韓国法制研究院、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)と学術協定を結んでいます。このような結びつきを深化させ、拡大していくことで、その可能性も開けてくると考えています。
早稲田大学比較法研究所は、50年の歴史をもち、早稲田大学専任教員の研究員125名、学外の特別研究員62人の合計187人の研究者がこの研究所に属しています。それぞれの研究者が、これら多層の比較法研究に携わることで、早稲田大学比較法研究所は、さらに世界の中のWaseda University Institute of Comparative Lawへと成長していくことを確信しています。学内外の多数の研究者の旺盛な研究参加を期待します。