【華人経済とアジア [MA]】
1980年代の後半から、アジア地域の経済発展には目覚ましいものがありますが、その背景には中国、香港、台湾、そして 東南アジア、北米を結ぶ華人経済のネットワークの急速な展開が見られます。一方、97年7月以降、東南アジア諸国は相次いで経済危機・金融危機に直面して いることも事実であります。こうした点をふまえつつ、本プロジェクト研究では、現在形成されている華人経済圏の主要なネットワークがどのようなものか、ア ジアにおける華人企業と日欧米の多国籍企業との連携、華人系諸財閥・企業の市場慣行、対外投資の実情、態様を調べていきます。また、華人企業における家族 ビジネスの実態、東南アジアにおける華人企業と土着系企業との関係、中国本土の諸大省と華人ビジネスの関係等についても考察し、「インフォーマル・ビジネ ス」の代表的形態ともいわれる華人経済圏と華人資本・企業の実像の解明に努めます。
本プロジェクト研究は、アジアにおける華人経済圏の重要性を認識した上で、アジア全域の華人資本・企業の本質的な全体像を把握する前に、まず個別的な国の 華人資本・企業の把握に力点を置きます。つまり、国別に華僑・華人の資本・企業の生成と発展、代表的な華人企業のケース・スタディ、華人商法の特徴、華人 企業と国営企業や民族企業との関係、中小零細企業(裾野産業、地場産業)との関係、軍・政府・政党との関係、海外事業展開(地域化や国際化)、強靱性と脆 弱性、21世紀に向けての展望などについて分析・究明します。
なお、日本企業との協力関係の構築について言えば、まず、「華人的経営」と「日本的経営」との比較研究が重要です。また、アジア諸国の華人企業(家)と事 業で協力する理由(資本、技術、経営ノウハウ、流通ネットワーク、人脈、政治的影響、情報など)、協力しない理由(工業発展に対する長期ビジョンの欠如、 再投資よりも配当を好む、資本、技術、経営ノウハウの欠如、投機的でリスクが高い、家族経営志向、所有と経営の未分離、製造部門への投資への関心の欠如) についても逐次検討します。
勿論、本プロジェクト研究は、「華人経済研究」に限定しません。アジア「四極」(日本、中国、NIEs、ASEAN)の経済発展の研究に力点が置かれてい ます。尚、アジア地域経済統合や協力(ASEAN10+中国、ASEAN10+日本、各種の経済圏の構想など)のメカニズムや発展についても考察の対象と なります。
院生は広汎にアジアを中心とする各地域の新聞、雑誌、文献を読みます。そして学期開始後3か月以内に、3~5枚程度(400字詰の原稿用紙、英語の場合は それに同等の字数)の研究レポートを提出します。自分の関心のある研究分野や暫定的な研究テーマを早い時期に設定することが大事です。指導教員の個人的な アドバイスを取り入れ、2か月以内に再度修正した研究レポートを提出します。そして6か月以内に基本的な研究分野やテーマを決め、本格的な資料収集や基本 文献の精読に着手します。1年以内に修論の明確な研究プランや論文の枠組みを提示すると同時に、論文の肉付けの作業に専念します。修論が最終的に出来上が る前に、3回程論文のドラフトを提出し、教員の個人的な指導を受け、論文の書き換えや補足修正の作業に従事します。私は指導教員として院生が修了するま で、かなり質の高い修論の完成に向けて熱心な指導に努めます。
近年、「華僑・華人経済研究」や「アジア経済研究」などの書物が急増してきています。本プロジェクト研究では、言うまでもなく、和文のものに限定せず、英 文や漢文などの文献資料をも駆使しつつ、院生一同と本格的な研究に取り組んで行きたいと思います。また、研究者同士による国際学術交流への積極的な参加は 勿論、海外研修視察やヒアリング調査も、現段階におけるアジア華人経済圏の実態把握や、華人企業活動に関する最新データの収集分析に重要であると考えてい ます。私は院生一同が21世紀の企業経営者、国際機関の専門家、政府官庁の幹部、大学研究機関の学者・研究者になれるよう研究指導に努めたいと思っていま す。私はひとりの「アジア経済研究者」「華人学者」、「アジアウォッチャー」として、長年に亘り築いてきたアジア各国の学界、政界、経済界に通ずる人脈や ネットワークを活用して、特に「内なる分析視点」で院生一同の研究指導に役立てたいと考えています。 |