文学学術院は、文化構想学部、文学部、文学研究科、総合人文科学研究センターの体制をとっています。
この2学部・1研究科・1センターが、一元化された運営組織の中で、幅広い人文学研究のスケールメリットを活かし、より充実度の高い柔軟な教育研究活動を展開しています。
文学学術院長 高松 寿夫
早稲田大学文学学術院は、戸山キャンパスに展開する「人文科学の知」の拠点です。
1890年(明治23年)の文学科創設以来、130年を超える歴史を有し、これまでに多数の卒業生を輩出してきています。その中には、教育・研究職に携わった人びとも多く、日本における人文科学教育・研究の一大中核でもあります。2004年に編成の大きな改革を行い、現在のように、文化構想学部・文学部・大学院文学研究科・総合人文科学研究センターが一体となった、文学学術院がスタートしました。
文学学術院の大きな二本柱が、文化構想学部と文学部の両学部です。文化構想学部は6つの論系に分かれ、既存の学問体系にとらわれない様々な領域の融合を模索するカリキュラムになっています。一方、文学部は18のコースに分かれ、体系的な専門知識や分析の方法を修得できるカリキュラムを基本としています。このように紹介すると、一見、対照的にすら思える両学部の性格ですが、その両学部の学生が戸山キャンパスの中で、多くの同じ科目を共有しながら、それぞれのカリキュラムを展開させているところが、両学部のさらに大きな特色だと言えるでしょう。深く極めようと思えばあくまでも深く極めることができ、広く様々に知見を広げようと思えば人文科学の全領域に渡って広い知見を得ることができ、そして学ぶ本人の覚悟次第ではそのどちらも追求できるのが、両学部のカリキュラムです。学部の枠を超えた「副専攻」の取得も推奨しているところです。豊富な科目のすべてのシラバスはWebで公開されていますので、関心のあるキーワードで検索をかけつつ、一度ご覧になってみてください。
領域をまたいだ知の融合は、あらゆる研究領域において、こんにち大変に重視されています。将来の研究者を養成することが大きな目的でもある文学研究科は、1専攻体制をとることで、異なるコースの科目も、演習科目を含めて履修することが可能です。院生の積極的な、関連諸分野の知識や方法の吸収によって、新しいパラダイムの創出を期待しています。
もちろん、われわれ教員も、自らの研究の推進と深化に余念はありません。論系・コースを超えた教員間の連携を積極的に図るためにも、総合人文科学研究センターは活発に活動を展開しています。研究成果の発信の一環として、年間を通して、実にさまざまな講演会、ワークショップ、研究報告会等を、同センターやその下の各研究部門の主催で開催しています。その多くは学生や一般の方々にも広く公開しています。現在、早稲田の戸山では、どんな新しい動きが起ころうとしているのか、ご関心があれば、それらのイベントにご参加いただけるとよいかと思います。
さて私は、学生時代からこの戸山キャンパスに通い続けていますが、キャンパス内に見出せるささやかな自然を、昔からこよなく愛しています。39号館の前の植え込みの梅の木は、毎年立春前後にかならず花をほころばせ、いち早く春の訪れを知らせてくれます。事務所脇の植え込みでは見事な紫色のアジサイが花開き、梅雨時の鬱陶しい気分を一瞬爽やかにしてくれます。晩秋の紅葉の頃は、33号館と39号館を結ぶ渡り廊下の傍らにひっそりと、しかしなかなか丈高く立っているイチョウが、見事に黄色く色づいているのを、私は例年ほれぼれと見上げています。冬は、スロープ脇に並木を成しているメタセコイヤが、すっかり葉を落として寒々しいのですが、それをよく晴れた日に仰ぎ見ると、真っ青な空に高くまっすぐにそそり立つ様子が、実に爽快です。
上記したような光景は、この30年以上、ほぼ変わりがありません。そこに2018年末、かつての記念会堂の地に装いを新たに開場した早稲田アリーナは、屋上が芝生と豊かな植栽に覆われた「戸山の丘」として姿を現しました。この丘の上に至るジグザグの通路脇には、わざと植え付けたのか、たまたまどこかから種が飛んできてそこに芽生えただけなのか、雑然と生えている(ように見える)草花があふれてにぎやかです。その折々の草花が入れ替わり立ち替わり姿を見せる戸山の丘は、昔からのささやかな自然とも相性よく、目を楽しませてくれます。早朝には、丘の麓はちょうど東側に面しているので、草花が朝日に映えてキラキラと輝くようです。1時限目の授業があるときは、ちょっと早めに登校して、この風情をぜひ楽しんでもらいたいものです。
キャンパス内でもっとも高層の建物である33号館の最上階の16階から戸山の丘を眺め下ろす景観も、なかなか見ごたえがあります。殊に初夏には、穴八幡神社の森と一続きになった素晴らしい新緑の光景が楽しめます。珍しく東京に雪が降り積もった翌日、よく晴れた日などもいいですね。坪内逍遥博士が文学科を立ち上げた頃の早稲田は、文字通り田園が広がる東京の郊外でしたが、その雰囲気は、述べたような戸山キャンパス周辺のささやかな自然の中になおとどまっていると言えましょう。
そのような環境の中で、日々、文学学術院の諸々の活動が営まれています。
(左から順に)
文学学術院は、創立150周年(2032年)を見据えた、将来構想を策定しました。
これらは文学学術院の構想段階のものであり、大学として決定したものではなく、今後議論を深め、必要性と適切性が認められるものについては、正規の手続きを経て順次開始していきます。
早稲田大学文学部は、東京専門学校文学科創設(1890年)以来、人文科学、文化科学の蓄積を時代に翻弄されず未来に継承すること、人類が直面する課題に向き合いその解答を模索することを使命にして、多彩な人材を育成してきました。
今後も「学問の自由」「清新な気風」「個性豊かな在野の学風」という建学の精神のもと、教育・研究のさらなる充実を推進して参ります。
1882 明治15年 |
大隈重信により東京専門学校創立 |
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1890 明治23年 |
坪内逍遙博士らにより文学科創設 |
1891 明治24年 |
『早稲田文学』創刊 |
1902 明治35年 |
早稲田大学と改称、大学部文学科となる |
1904 明治37年 |
専門学校令による大学となる |
1920 大正9年 |
新大学令による大学となり、文学部となる |
1928 昭和3年 |
演劇博物館開館 |
1945 昭和20年 |
敗戦の翌月から授業再開 |
1949 昭和24年 |
学制改革による新生早稲田大学となり、夜間学部として第二文学部創設、第一文学部・第二文学部の呼称スタート |
1951 昭和26年 |
大学院文学研究科 修士課程創設 |
1953 昭和28年 |
大学院文学研究科 博士課程(現在の博士後期課程)創設 |
1957 昭和32年 |
記念会堂完成 |
1962 昭和37年 |
戸山キャンパス完成 |
1968 昭和43年 |
小汀利得氏からメタセコイアが寄贈される |
1973 昭和48年 |
第一文学部指定校推薦入学を開始 |
1982 昭和57年 |
創立100周年記念式典開催 |
1991 平成3年 |
『早稲田文学』100周年記念展開催 |
1992 平成4年 |
戸山図書館開館 |
1996 平成8年 |
第二文学部社会人入試開始 |
2004 平成16年 |
文学学術院設置 |
2007 平成19年 |
第一文学部・第二文学部を再編し、文化構想学部・文学部を設置/大学院文学研究科を人文科学専攻の一専攻に改編/文学研究科 博士後期課程にアジア地域文化学コース新設 |
2008 平成20年 |
文学研究科とコロンビア大学人文科学大学院東アジア言語文化研究科との間で、修了時に両大学の学位を取得できるダブルディグリー・プログラムを開始 |
2010 平成22年 |
文化構想学部・文学部が完成年度/文学学術院120周年記念行事/文学研究科 修士課程および博士後期課程に表象・メディア論コース新設/33号館建て替え工事着工 |
2011 平成23年 |
文化構想学部・文学部で初の卒業生を輩出/文学研究科 修士課程に現代文芸コース新設 |
2012 平成24年 |
総合人文科学研究センター設置 |
2013 平成25年 |
総合人文科学研究センター研究誌「WASEDA RILAS JOURNAL」発刊 |
2014 平成26年 |
文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」(トップ型)に、「Waseda Ocean構想」が採択、文学学術院に国際日本学拠点を設置 |
2015 平成27年 |
新33号館高層棟・低層棟竣工/角田柳作記念国際日本学研究所を開設 |
2017 平成29年 |
文学研究科 修士課程および博士後期課程に中東・イスラーム研究コース新設/文学部に中東・イスラーム研究コース新設/文化構想学部 多元文化論系に中東・イスラーム文化プログラムおよびGlobal Studies in Japanese Cultures Program(JCulP:国際日本文化論プログラム)新設 |
2018 平成30年 |
文学研究科 博士後期課程に国際日本学コース(Global-J)新設 |
2019 平成31年 |
戸山キャンパスに早稲田アリーナが竣工 |
2021 令和3年 |
国際文学館(村上春樹ライブラリー)開館 文学研究科 修士課程に国際日本学コース(Global-J)新設 |