商学は、企業がヒト、モノ、カネ、情報などの資源をどのように利用し、また、それによってどのようなビジネスを展開するかを中心に研究を行うものです。同時に、生産者や消費者の行動の結果、経済社会が構築されることから、種々の経済取引をはじめとしてビジネスと経済との相互作用も研究対象にしています。
早稲田大学商学部では、商学をビジネスの研究にとどまらず、経済社会を質的・量的に豊かにすることをめざす学問ととらえています。明治期の三大経済学者の一人とされる天野為之博士が商科創設にかかわったことから、この傾向はいまも色濃く残っています。
本学部は、1904年の商科創設以来100年以上にわたって「学識ある実業家」の養成を教育理念に据えて人材の育成に取り組んできました。これは、上述のような商学の学問上の幅広さや奥行きの深さを反映したものです。
ここでいう「学識ある」とは、専門知識の獲得だけをさすわけではありません。国や地域、社会や風土などに応じてビジネスが展開されます。また、ビジネスも他と同様に、多様な価値観のせめぎあいの場です。このために、幅広い教養や国際感覚が必要となるでしょう。文化や歴史などを学ぶことは視野を広くするとともに、将来の指針にもつながります。加えて、ビジネスの世界では効率性が追求されますが、それには商道徳や倫理観があってこそということができます。
本学部は教育理念に沿った幅広い学びの場を提供します。
次世代の産業界で活躍するであろう商学部生には、エビデンスにもとづく論理的思考力を養うことが求められます。知識の獲得には貪欲であるべきですが、獲得した知識をもとに考え抜く力も身につけてほしいと思います。
コロナ禍の中、企業行動や消費者行動に変容が生じています。これを契機として、商学の分野において、どのようなパラダイムシフトが生じるのかを、商学を志す者がともに関心を寄せ、ともに探求していきたいと考えています。
商学部長 横山 将義