enpaku 早稲田大学演劇博物館

イベントレポート

早稲田大学演劇博物館 イベントレポート

一夜限りの野外上映会 エンパクシネマ 2019

イベントレポート

 
encinema_er_01
舞台前に巨大スクリーンを設置した演劇博物館

2019年10月1日(火)、演劇博物館の前舞台を活用した野外映画上映会「エンパクシネマ」第3弾が開催されました。前週金曜日までは降水確率70%だった天気予報をひっくり返し見事な快晴に恵まれ、秋の始まりを爽やかな風で感じさせる穏やかな夜空になりました。過去2年間の開催が好評を博し、今回は平日にもかかわらず450名以上の来場者にお越しいただきました。

encinema_er_02
秋夜にたたずむ演劇博物館

今年の上映プログラムは、昨年に引き続きマツダ映画社の協力のもと、 3本の無声映画で構成しました。上映作品は、カラード・モノトーン・デュオの鈴木真紀子氏(フルート)と湯浅ジョウイチ氏(ギター)の生伴奏に加え、活動写真弁士の澤登翠氏、山城秀之氏、山内菜々子氏による解説によって彩られました。

06_-nz6_7602_02
活動写真弁士の澤登氏によるご挨拶

encinema_er_04
ご来場者のあたたかい拍手をいただき、いよいよ開幕です

はじめに、漫画映画『一寸法師 ちび助物語』(1935年)が上映されました。『一寸法師 ちび助物語』は、日本初の長編漫画映画『桃太郎 海の神兵』(1945年)を手がけた瀬尾光世の初期作品で、昔話でお馴染みの一寸法師が勇敢に鬼へ立ち向かう物語です。スタンプで分身を作るなど奇想天外なアイデアを繰り出す一寸法師が、山内氏のはきはきとした軽快な解説によって活力溢れる小さなヒーローとなり、スクリーンで大活躍しました。

encinema_er_05
活動写真弁士の山内菜々子氏

10_nz6_7764
『一寸法師 ちび助物語』より、一寸法師がスタンプを使って分身し邁進する様子に盛り上がります

つづく『ドタバタ喜劇』(製作年等不明)は、三文小説家ジョニーが女優パール・ブラックの落し物を届けに撮影所に向かい、様々な試練に阻まれてしまう抱腹絶倒の古典的コメディです。カラード・モノトーン・デュオによる、運動会でお馴染みの《天国と地獄》の生伴奏が軽やかなテンポを作り出し、山城氏の柔らかく陽気な解説によって増幅された笑いと驚きの連続に会場は爆笑の渦に包まれました。特に、子どもの来場者の笑い声やかけ声に触発されて、多くの来場者が本物のワニやライオンからドタバタと逃げ惑う気弱なジョニーを笑いながら見守る光景には、活弁と生伴奏によるライブ上映の醍醐味の一端を垣間見ることができました。

encinema_er_08
活動写真弁士の山城秀之氏

encinema_er_07
『ドタバタ喜劇』より、本物のライオン登場シーンには会場がわっと驚きました

encinema_er_09
フルート奏者の鈴木真紀子氏(カラード・モノトーン・デュオ)

encinema_er_10
ギター奏者の湯浅ジョウイチ氏(カラード・モノトーン・デュオ)

encinema_er_13

最後に上映したのが、「映画の父」として知られるD・W・グリフィス監督の代表作『散り行く花』(1919年)です。澤登氏のまるで万華鏡のように感情豊かな活弁を通じて、主演の名女優リリアン・ギッシュの悲哀と儚さがヒロインの悲劇的な運命に体現されました。ちょうど100年前の1919年に公開された本作は、移民労働者や虐待、映画や演劇における人種・民族の表象など、2019年に生きる私たちの社会が抱える問題と密接に関わる作品です。そういった映画と社会のつながりを来場者に考えていただくことを目的に、今年は初めて一時間を超える長編作品を上映しました。来場者の視線は最後までスクリーンに釘付けで、ギッシュ演じるルーシーの運命を静かに見届ける様子が印象的でした。

encinema_er_11
活動写真弁士の澤登翠氏

encinema_er_12
『散り行く花』より、リリアン・ギッシュのはかない表情に会場の視線が集められました

encinema_er_14
映写技師によるフィルム上映の様子を体感

文化庁補助金事業「地域の博物館を中核としたクラスター形成事業」の一環で今年度も開催されたエンパクシネマでは、第2回目に引き続き、貴重な16ミリフィルムで上映し、映写技師による映写作業を映画体験の一部として来場者に体験していただける環境を設けました。デジタル・メディアと動画配信サービスの充実によって現代は日常に映像が溢れていますが、無声映画は現在も広い世代の人々を魅了する可能性を秘めています。特に、活動写真弁士の解説と音楽の生演奏を提供するエンパクシネマは、インスタライブや実況生配信など、ライブ感を重要視する現代のメディア空間と親和性の高い映画上映形態だと言えます。上映後の来場者アンケートには、第4回目開催への期待や上映作品のリクエストだけでなく、初めての来場者からは「映像と語り、音楽のすばらしさに夢中になってしまいました」という嬉しい感想が寄せられました。今後も活動写真弁士や無声映画を含む映像文化の魅力を発信し将来への文化継承に貢献できるよう、開催の継続を目指していきます。

文責:久保豊(早稲田大学演劇博物館助教)

24_nz6_8313_epp

encinema_er_15

出演

澤登翠(活動写真弁士)、山城秀之(活動写真弁士)、山内菜々子(活動写真弁士)、湯浅ジョウイチ(ギター)、鈴木真紀子(フルート)

上映作品

1. 『一寸法師 ちび助物語』(1935年、旭物産合資会社映画部)[10分]
2. 『ドタバタ撮影所』(製作年等不明)[11分]
3. 『散り行く花』(1919年、ユナイテッド・アーチスツ)[67分]

WEB

https://www.waseda.jp/enpaku/ex/8770/
|エンパクシネマ 2019

19_nz6_8050_01

主催:早稲田大学演劇博物館、新宿から発信する「国際演劇都市TOKYO」プロジェクト実行委員会
助成:bunkacho_logo 平成31年度 文化庁 地域の博物館を中核としたクラスター形成事業

関連イベント

その他のイベントレポート