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岡崎藝術座リーディング公演『バルパライソの長い坂をくだる話』

日時:2017年11月24日(金)
会場:早稲田大学小野記念講堂
作・演出:神里雄大
出演:古舘寛治、鷲尾英彰、大村わたる(柿喰う客)
照明:筆谷亮也
音響:和田匡史
協力:マッシュマニア
トークゲスト:佐々木敦(批評家、HEADZ主宰)

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3年連続でフェスティバル/トーキョーに参加するなど、国際的な舞台芸術祭で次々と作品を発表し、国内外で注目を集める岡崎藝術座によるリーディング公演が小野記念講堂で上演された。今回上演された『バルパライソの長い坂をくだる話』は神里雄大氏のアルゼンチン滞在体験を踏まえて書かれた新作。現地の俳優とともにKYOTO EXPERIMENT京都国際舞台芸術祭2017の公式プログラムの一つとして全編スペイン語で初演されたものを日本語版リーディング公演として上演した。俳優は今回のリーディング公演のために集められたオリジナルメンバーだ。

本作に登場するのは父の散骨のために遠い道のりをやってきた息子と母、そして彼らの手助けをすることになっているらしき男2人の計4人。男たちの語りは様々な形で自らのルーツに遡りつつ、自らが出会った他人の話、あるいはその他人から聞いた話などが渾然一体となって物語を紡いでいく。パラグアイで出会ったドイツ人、仲の良かったセニョール・ソノダ、ブエノスアイレスの金持ちの友人、かつて世界中を旅した人類、そして沖縄で遺骨発掘をする少年と父島にかつて住んだアメリカ人の末裔。複数の語り手の語りを通して観客もまた世界を旅する。

本作はその後、2018年2月16日(金)に第62回岸田國士戯曲賞を受賞した(福原充則氏の『あたらしいエクスプロージョン』との同時受賞)。神里氏はこれまで『ヘアカットさん』(2009)、『(飲めない人のための)ブラックコーヒー』(2013)、『+51 アビアシオン, サンボルハ』(2015)の3作品でも岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネートされており、4度目のノミネートでの受賞となった。

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終演後には批評家の佐々木敦氏をゲストに迎え、ポストパフォーマンストークを実施。神里氏にとって俳優の仕事とは他人の話を語ることであり、それゆえ戯曲自体も他人から聞いた話を組み込む形で構成したという話が出ると、佐々木氏からはそのような形式と移民や祖先へと遡るルーツのモチーフは不可分なものとしてあるのではないかという指摘がなされた。神里氏の近作はモノローグ主体の形で書かれているが、そこにはあらかじめ他者が組み込まれている。形式と内容の両面を行き来しつつ、神里氏の近作とのつながりと差異の双方が浮き彫りになる充実したトークとなった。

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