enpaku 早稲田大学演劇博物館

イベントレポート

早稲田大学芸術功労者顕彰記念 山田太一展 関連イベント

山田太一展記念座談会 堀川とんこう×中村克史×長谷正人「山田太一ドラマの演出」

2017年7月12日(水)18:30-(18:00 開場)
会場:早稲田大学小野記念講堂
登壇者:堀川とんこう(テレビ演出家)、中村克史(ディレクター、プロデューサー)
司会:長谷正人(早稲田大学文学学術院教授)

 イベントレポート

2017年7月12日、早稲田大学演劇博物館の特別展「早稲田大学芸術功労者顕彰記念 山田太一展」の関連イベントとして、「山田太一ドラマの演出」と題したシンポジウムが開催されました。登壇したのは山田太一ドラマの傑作を生み出してきた2名の演出家です。1人は、『男たちの旅路』(1976-82年、NHK)や『日本の面影』(1984年、NHK)といった革新的なドラマの演出を担当した中村克史氏。そしてもう1人は、不朽の名作として知られる『岸辺のアルバム』(1977年、TBS)の演出家兼プロデューサーであり、『時は立ちどまらない』(2014年、テレビ朝日)や『五年目のひとり』(2016年、テレビ朝日)など、近年の山田作品も積極的に手掛ける堀川とんこう氏です。司会は、『敗者たちの想像力——脚本家 山田太一』の著者である長谷正人氏(早稲田大学文学学術員教授)が務められました。

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シンポジウムは、山田太一作品の名場面を随時実際にスクリーンで映しながら進められました。具体的な映像を前にして、演出家のお二方は当時の状況を克明に思い出され、様々な苦労や創意工夫など、製作現場の裏側について詳細に語っていただきました。『岸辺のアルバム』からは、多摩川水害の実写映像を使用した有名なオープニングタイトルと、息子の繁(国広富之)が家の階段上で家族の秘密を暴露するクライマックス・シーン(第12話)が上映されましたが、来場者アンケートでは当時の視聴体験を懐かしく想起したという声が多数寄せられました。さらに、『男たちの旅路』からは「車輪の一歩」の一部が上映されました。車椅子生活の実態を描いた本作は、現在を生きるわれわれにも今なお大きな問題を突きつける傑作です。「車輪の一歩」における登場人物の心理を巧みに描き分ける中村氏の演出のきめ細やかさは、日本のテレビドラマの水準の高さを明確に示しており、当日客席にいらした山田太一氏にも、会場から大きな拍手が送られました。

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現在、演劇博物館は来年の創立90周年に向けた準備のため長期休館中です。この間に収蔵資料の調査・整理や建物のメンテナンス、常設展示の大幅な刷新などを行い、2018年3月23日(金)にリニューアルオープンします。2017年度、演劇博物館では「大テレビドラマ博覧会」や「山田太一展」などの展示を行いましたが、近年は映画だけでなく、テレビに関する資料の収集にも力を入れています。生まれ変わった新しい演劇博物館の下で公開される充実した関連資料を通して、豊かなテレビ作品の世界を堪能してもらいたいと思います。

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 登壇者

堀川とんこう(ほりかわ・とんこう)
TBS出身のプロデューサー、ディレクター。『岸辺のアルバム』(1977)、『モモ子シリーズ 1-7』(1982-97)、『或る「小倉日記」伝』(1993)、『恋人たちのいた場所』(1986)ほか多数。最近作に『時は立ちどまらない』(2014)、『五年目のひとり』(2016)など。著書に『今夜も、ばれ飯』(平凡社、1995)、『ずっとドラマを作ってきた』(新潮社、1998)。

中村克史(なかむら・かつふみ)
東京大学文学部卒業。NHKチーフディレクター、チーフプロデューサー、ドラマ部長、編成部長を経て、NHK放送文化研究所所長。NHK学園理事長。主な作品に大河ドラマ『獅子の時代』(1980)、『男たちの旅路』(1976-82)、『ポーツマスの旗』(1981)、『日本の面影』(1984)など。主なプロデュース作品にテレビ小説『澪つくし』(1985)、大河ドラマ『独眼竜政宗』(1987)ほか。

 司会

長谷正人(はせ・まさと)
1959年生まれ。早稲田大学文学学術院教授。専門は映像文化論、文化社会学。著者に『映像という神秘と快楽』(以文社、2000)、『映画というテクノロジー経験』(青弓社、2010)、『敗者たちの想像力――脚本家山田太一』(岩波書店、2012)など。