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イベントレポート

シェイクスピア没後400年記念特別展「沙翁復興 ― 逍遙からNINAGAWAまで」関連イベント

野村萬斎トークショー「狂言とシェイクスピアの出会い」

日時:2016年10月18日(火)18:30~(開場17:30)
会場:早稲田大学大隈記念講堂 大講堂
講師:野村萬斎(狂言師) 聞き手:児玉竜一(演劇博物館副館長)

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 イベントレポート

2016年10月18日(火)大隈記念講堂大講堂にて、狂言師野村萬斎氏が「狂言とシェイクスピアの出会い」をテーマとしたトークショーを行いました。
今年話題の映画『シン・ゴジラ』のゴジラや、ドラマで昭和天皇を演じた際のエピソードに始まり、狂言の技法を応用したシェイクスピア戯曲の演出や演技に関する身振りを交えたお話は、会場を大いに沸かせました。

ロンドンに留学した経験を持ち、またしばしば英国で公演を行ってきた萬斎氏によれば、狂言とシェイクスピアには多くの共通点が見出されるといいます。
たとえば劇場空間については、多くのシェイクスピア戯曲が上演された17世紀のロンドン・グローブ座では、大掛かりな舞台美術があったわけではなく、ほとんど何もない空間の中で様々な人間模様が演じられていましたが、それは “ないものをあるように見せる” 能や狂言の、方法や約束事にも通じていると感じたそうです。また発声についても、シェイクスピアの戯曲の韻文調で歌い上げるように演じる点に、狂言の抑揚をつけた発声と類似点があるといいます。

一方でイギリスにおいては、シェイクスピアの戯曲と舞台で使用された楽曲などが残っていても、17世紀当時の演技方法までは現代に残されておらず、それが能狂言と決定的に異なる点であることを指摘されました。
実際に萬斎氏が、ロンドンで『法螺侍』(『ウィンザーの陽気な女房たち』の翻案)や『まちがいの狂言』(『間違いの喜劇』の翻案)の公演を行った時には、対話を重視した現代のリアリズム演劇以上に、狂言の型や身体性、約束事に基づいた抽象的な表現の技法が、シェイクスピアの演出に有効であることに気がついたというエピソードは印象的でした。

また主演・演出された『国盗人』(河合祥一郎氏による『リチャード3世』の翻案)や、狂言の「省略の美学」の発想から5人の演者による再構成・演出を施した『マクベス』のエピソードなど、これまでの豊富な経験と知識に基づいた興味深い話が尽きませんでした。

古典を極める一方で、現代演劇の出演・演出やジャンルを超えた活動を果敢に挑戦する萬斎氏の言葉には、現代に生きる古典芸能の継承者としての大きな覚悟と矜持が感じられました。世界無形文化遺産にも指定された狂言は、萬斎氏のチャレンジングな仕事により、さらにその表現の可能性を広げていると言えるでしょう。

なお、萬斎氏による演出作品を紹介しているシェイクスピア没後400年記念特別展「沙翁復興 ― 逍遙からNINAGAWAまで」は2017年1月29日まで演劇博物館で開催されています。
ぜひ、お運びください。

文責:越智 雄磨(演劇博物館助手)

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(左から、冬木ひろみ教授、岡室美奈子館長、李成市理事、野村萬斎氏、児玉竜一副館長、十重田裕一教授)

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