図版 脳幹網様体賦活系
時実利彦、目で見る脳、東大出版会1969より
(図版クリックで拡大)
当研究会では、生理心理学や精神生理学
関連の研究発表会を定期的に行っています。
メンバーは早稲田大学の心理学系出身者が
中心ですが、それ以外にも当研究会のテーマ
に関心のある皆様も幅広く参加しています。
事務局
東京家政学院大学
家政学部心理学研究室
精神生理学実験室
市原
信
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最終更新日:8/23/11
●おしらせ
●研究会開催のお知らせ
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●最新研究会の発表要旨
●第63回研究会
日時 :2011年7月30日(土)16:30-17:30
場所 :早稲田大学スポーツ科学部
演者 :對間直也さん
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士1年
演題 :運動学習における文脈干渉効果とERP
運動学習における文脈干渉効果は,複数の動作課題をそれぞれブロック化して練習するよりも,試行毎にランダムな順序で練習した方が,練習期のパフォーマンスは低いものの,その後の保持テストではパフォーマンスが逆転するという現象であり,多くの実験で立証されてきた.今回,文脈干渉効果に関与するERPを測定したので報告した.本実験では,従来の文脈干渉研究で使われてきた,目標時間通りにボタンを4回押すタッピング課題(Wulf & Lee,1993)を用いた.その結果,タイミングの異なる3課題の中,2課題で文脈干渉効果を確認した.これら2課題では,4回目のボタン押しによって惹起した陰性電位に練習スケジュールの効果が認められ,ランダム群の方がブロック群よりも振幅値は大きかった.練習期では,ランダム群の方がブロック群よりも精緻な脳内情報処理が要求されることに起因したものと推察される.この陰性電位は,運動関連脳電位(movement-related cortical potential:MRCP)のなかでも末梢からの感覚フィードバックを反映した成分であると考えられる.一方,陰性電位直後に生じた陽性電位はブロック群の方が大きく,スキルレベルを反映したSPP(skilled performance positivity)である可能性を論じた.本研究の結果から,ボタン押し動作に伴う陰性電位の振幅値は情報処理の負荷量を反映し,スキル保持を促進することが示唆された.また,反応直後に生じる陽性電位の振幅値はスキルレベルを反映することが示唆された.
●第62回研究会
日時 :2009年12月19日(土)16:30-18:00
場所 :早稲田大学スポーツ科学部
精神生理学実験室(570室)
演者 :正木宏明先生
早稲田大学スポーツ科学学術院
演題 :「行為と結果の随伴性と事象関連電位」
今回,ギャンブリング課題遂行中に観察される刺激前陰性電位 (affective-motivational stimulus-preceding negativity: SPN)の生起要因として「行為と結果の随伴性(action-outcome contingency)」が重要であることを報告した.近年,報酬予期に線条体が関与することはfMRI 研究等で明らかにされている.Tricomi et al. (2004)は単純なギャンブリング課題を用い,自分の意思で反応選択できる条件と,予め決められた反応しかできない条件を比較した.その結果,前者の条件でのみ成立する「行為と結果の随伴性」によって尾状核が顕著に賦活することを示した.そこで本研究では,同様のギャンブリング課題を用い,情動-動機づけSPNを測定した.SPNは右半球で優位に出現し,行為と結果の随伴性によって増大した.この結果は,右島皮質と線条体に起因したものと考えられた.
●第61回研究会
日時 :2009年8月7日(金)15:30-17:00
場所 :早稲田大学スポーツ科学部
精神生理学実験室(570室)
演者 :玉置應子先生
早稲田大学スポーツ科学学術院(日本学術振興会特別研究員)
演題 :視覚運動学習における睡眠の効果
発表要旨
新しく獲得した視覚運動技能は,夜間睡眠後に向上することが示されている。ノンレム睡眠中に主要な脳波活動の1つである睡眠紡錘波が,この向上に関与する可能性が指摘されている。本研究会では,睡眠を介した運動パフォーマンスの向上と,その向上における睡眠紡錘波の関与についての研究成果を報告した。
まず,新しく獲得した技能と既に獲得している技能の学習における終夜睡眠の効果を検討した結果,睡眠は新しく獲得された視覚運動技能の向上に効果のあることが示された。次に,睡眠紡錘波をslow spindleとfast spindleの2種類に分類し,それぞれの活動性と手続的記憶の定着との関連を検討した。運動技能課題の向上率が高いほど,fast spindleは高密度,高振幅,長持続であり,学習夜では学習をしなかった夜の非学習夜よりも,高振幅,長持続であった。一方でslow spindleの活動性と運動技能課題の向上の間に有意な関係はみられなかった。このことから,2種類の睡眠紡錘波の中でもfast spindleの活動性が手続的記憶の構築に関与すると考えられた。さらに,sLORETA(Standardized Low Resolution Brain Electromagnetic Tomography: Pascual-Marqui, 2002)を用い,学習に関連したfast spindle活動性増大の脳内発生源を推定したところ,左運動前野と左頭頂連合野に推定された。いずれの部位も視覚運動学習に関与することが分かっており,睡眠中にはこれらの部位において可塑的な変化が生じている可能性が示唆された。
以上より,睡眠は視覚運動学習において効果的であること,fast spindleがその学習に関与することが示された。
●第60回研究会
日時:2008年12月22日(月)16:30-18:00
場所 :早稲田大学スポーツ科学部
精神生理学実験室(570室)
演者 :小川景子先生(早稲田大学スポーツ科学学術院[PD])
演題 :レム睡眠中の脳機能研究
〜ヒトとラットを対象とした夢の発生メカニズム検討〜
発表要旨
これまで我々は夢の発生メカニズム検討を手がかりにレム睡眠中の脳機能研究を行ってきた。本研究会では,ヒトとラットを対象とした研究について紹介する.
@ヒトを対象とした急速眼球運動に伴う脳電位の検討
レム睡眠中には鮮明でありありとした夢見体験が生じ、覚醒中のサッカードと形態が類似した急速眼球運動が生じる。この夢見体験と急速眼球運動には関連が指摘されている。そこで我々は急速眼球運動が生じる際の脳活動の様子を,時間分解能に優れ特定の事象に関連した一過性の脳活動を検討できる事象関連電位(ERP:event
related potential)を用いて検討した。検討の結果、急速眼球運動の開始前には海馬傍回、扁桃体(PRN:pre-REM
negativity)の賦活、急速眼球運動の開始に伴い運動野、頭頂連合野(P200r)の賦活、そして急速眼球運動の停留に合わせて後頭部視覚野(ラムダ様反応)の賦活が生じていることが分かった。急速眼球運動に伴い観察されたこれらの一過性の脳活動は鮮明でありありとした夢見体験の生成と対応すると考えられる。
Aラットを対象とした脳幹-皮質経路の検討
レム睡眠中の急速眼球運動は脳幹由来であることが知られている。このことから、急速眼球運動に伴う一過性の脳電位活動は、レム睡眠中の脳幹と皮質の関連性を間接的に示した結果と考えることができる。そこで我々は、ラットを用いた動物実験により、直接、脳幹と皮質の繋がりを検討することとした。検討には、レム睡眠中の脳幹-視床-海馬-皮質経路を想定し、この経路の一部を破壊または活動抑制することで生じる、皮質活動への影響を検討した。検討の結果、経路のうち視床下部の一部(乳頭体上核)を破壊したところ、海馬および皮質の脳波活動(シータ波)に変化(周波数の低下,パワ値の増大)が生じ、脳幹-皮質経路に対する影響が観察された。さらに今後はレム睡眠中における脳幹-皮質経路の障害が日中の行動に及ぼす影響について検討し、レム睡眠中の脳機能について日中-夜間を通した体系的な検討を行っていく。
●第59回研究会
日時:2008年8月9日(土)16:30-18:00
場所 :早稲田大学スポーツ科学部
精神生理学実験室(570室)
演者 :紙上敬太先生(早稲田大学スポーツ科学学術院)
演題 :身体運動は認知機能を改善する?
発表要旨
発表者はこれまで,事象関連脳電位を用い,「どのような身体運動が認知・脳機能を改善させるのか」,「どのような認知・脳機能が身体運動の影響を受けるのか」に関して若齢者,高齢者を対象に研究を進めてきた.
前半は「一過性運動が高齢者の認知機能に与える影響」に関して発表した.この研究は一過性運動の影響が高齢者と若齢者で異なるのかどうかを検討したものである.低・中強度運動後の反応時間,P3潜時の変化が若齢者と高齢者で同様であったことから,低強度,中強度の有酸素運動は,年齢にかかわらず(成人において)認知機能を改善さることが考えられた.
後半は「習慣的運動が若齢者の認知機能に与える影響」に関して発表した.この研究は空間プライミング課題を用いることよって,「前頭機能」と「課題の難易度」のどちらが習慣的運動の効果を反映するのかを区別することを試みたものである.反応時間とP3潜時の結果から,課題の難易度とは独立して前頭機能が習慣的運動によって改善されることが考えられた.
これら2つの研究は,適度な有酸素運動は,成人において年齢にかかわらず前頭機能を改善させうることを示唆するものである.
●第58回研究会
日時 :2007年8月4日(土)16:00-18:00
演者 :望月芳子先生(早稲田大学)
演題 : CNVパラダイムに反映するタイミング
発表要旨
タイミングは多様な側面から研究が行われている.精神生理学的研究では随伴陰性変動(CNV)が指標として用いられてきた.時間情報処理に関与するワーキングメモリや,注意量の配分に対応して前頭部のCNVが増大することが報告されている.しかしながら,時間情報処理と反応運動の関係は明確に解明されていない.
本研究ではCNVと偏側性準備電位(LRP)を指標に用い,CNVパラダイム(警告刺激−命令刺激+運動反応;)における時間間隔の記憶と運動情報処理の関係を調べた.刺激間間隔は3
s一定で,試行間間隔を操作した(3 s/10 s).前期CNV振幅,foreperiod(FP; 警告刺激−命令刺激間)中のLRP(FP-LRP)立上り潜時の結果から,RT遅延条件はFP中の時間間隔検索事態で,運動準備の開始が遅延することが推察された.
また, 3次元脳内電流源密度分析(low resolution brain electro- magnetic tomography)を用いて2条件間におけるCNVの差の発生源を推定した.前期CNVではRT遅延条件の方が時間情報処理に関与するといわれる補足運動野の活動が大であった.後期CNVではRT早期化条件の方が,運動想起時に活性化するといわれる楔前部,知覚と運動を統合し運動野の活性を増大させるといわれる帯状回前部で活動が大であることが推定され,CNVから得られた示唆が強化された.
●第57回研究会
日時 :2007年3月10日(土)16:00-18:00
日時 :2007年3月10日(土)16:00-18:00
演者 :浅岡章一先生(早稲田大学スポーツ科学部)
演題 :「眠気とエラー反応モニタリング」
発表要旨
これまでに,眠気の強い時間帯にエラーが頻発することを数多くの研究が明らかにしてきた.更に眠気が強い時間帯のエラー頻度を低減させる具体的な方法も提案されてきており,その一つに日中の短時間仮眠がある.
事故防止という観点から考えるとエラーの低減とともに「自分がエラーした事にすぐに気づくかどうか(エラー反応のモニタリング)」も重要な問題である.そこで,我々は短時間仮眠が日中のエラー反応のモニタリングに対しても有用な効果を持つかどうかについて検討を行った.
実験では14:00から仮眠をとらせる条件と休憩をとらせる条件を設定し,エラー数,反応時間とともに,エラー反応のモニタリングを反映する事象関連電位「エラー関連陰性電位
(ERN)」の振幅を条件間で比較した.その結果,仮眠後では,休憩後と比較して,エラー数は低減し,反応時間も早くなる傾向にあった.
しかし,ERNの振幅に関しては条件間で違いがめられなかった.したがって,短時間仮眠はエラー反応のモニタリングに影響を与えないと考えられた.ただし,先行研究と比較して,本研究では日中のパフォーマンスに与える仮眠の効果そのものが弱かった可能性もあり,更なる検討も必要であると考えられた.
●第56回研究会
演者 :小川景子 先生(早稲田大学 スポーツ科学学術院)
演題 :レム睡眠中の急速眼球運動に伴う脳電位と夢見の精神生理学的検
夢は,ノンレム睡眠中よりもレム睡眠中で多く報告され,内容も鮮明であることが知られている.さらにレム睡眠中には,まるで起きて何かを見ているかのような急速な眼球運動が観察され夢との関連が指摘されている.
我々は,急速眼球運動に伴う脳内活動の変化(事象関連電位)を手がかりに,夢と急速眼球運動の関連を検証し,レム睡眠中の夢の発生メカニズムの検討を行った.
検討の結果,レム睡眠中には目を閉じて寝ているのにも関わらず,急速眼球運動後に視覚情報処理を反映する脳内活動が視覚野で生じていること,さらに急速眼球運動の開始に伴って,中心部優勢に脳電位が出現し,その発現機序が,帯状回と運動前野に推定されることが示された.帯状回と運動前野はそれぞれ,情動イメージと運動イメージに関連していることが先行研究より示されており,レム睡眠中に特有の情緒的で活動的な夢内容と対応する.最後に,レム睡眠中の生理現象と実際の夢内容との相関を検討した.その結果,急速眼球運動数が多いほど夢の内容がより印象的になること,また中心部優勢の脳電位については振幅値が大きいほど夢内容の奇異性が増し,活動的になることが示された.
以上をまとめると,レム睡眠中には急速眼球運動が出現することで夢内容がより印象的になること,さらに夢の発生メカニズムについては,急速眼球運動の開始と同時に情動・運動イメージが現われ,そこに急速眼球運動が終了することで現われる視覚イメージが統合されることによって夢が生じると考えることができる.
●第55回研究会
演者 :高澤則美 先生(江戸川大学社会学部人間心理学科)
演題 :「注意の集中は呼吸運動を抑制する」
ポリグラフ検査で測定される呼吸に関しては,裁決質問呈示時に見られる呼吸運動の抑制が注目されてきた.しかしながら,この呼吸の抑制がどのような心理的過程と関連しているかについては,未だ不明である.一方,スポーツ場面においては,呼吸の統制が運動調整の手がかりとして経験的に利用されており,射撃競技等では,撃発に先行して呼吸を停止させる統制も行われている.射撃では,銃口動揺をおさえる目的もあるが,それだけでなく,標的に対する注意集中に付随した反応とも考えられる.
本報告では,呼吸運動を変容させる要因として認知的要因に注目し,注意の集中と呼吸運動の関連を調べた.注意の集中を要求する課題として,トラッキング課題と周波数同定課題を用い,課題遂行中の呼吸運動を測定した。その結果,最も注意が集中される時点において呼吸運動の抑制が生起した。
次に,注意集中のレベルと呼吸運動抑制との関連をGo/NoGo課題によって調べたところ,反応選択時点の注意集中水準がより高くなると考えられるNoGo条件において,より大きな呼吸運動の抑制が生じた。
これらの結果から,注意の集中によって呼吸運動が抑制されることが明らかとなった。
●第54回研究会
演者 :Prof. Dr. Werner Sommer
(Institut fuer Psychologie
Humboldt-Universitaet zu Berlin)
演題 :Movement preparation
(lateralized readiness potential: LRP)
URL :http://zope.psychologie.hu-berlin.de/profship/bio/staff/mit_anz_1-en?pid=4489.0
発表要旨
The lateralized readiness
potential in combination with the contingent negative variation have been shown
to be useful tools in addressing question about movement programming and motor
preparation. The present talk reports several experiments with the movement
precuing paradigm. These experiments show that (1) the precuing paradigm
produces reaction time gains which are in fact localized in motor stages, (2)
at the level of the motor cortex the neuronal implementation of precued
movement parameters shows a strong hierarchical architecture whereas at more
central levels, motor programming of multiple movement dimensions occurs in a
parallel fashion, (3) anatomical factors like finger may differ from functional
factors like force or movement direction, (4) these effects are not due to
strategic choices of the participants but reflect limitations of the
information processing system.
●第53回研究会
演者
:本多麻子先生(川村学園女子大学文学部)
演題 :感情喚起スライドに対する予期が主観的評価と
心拍数に及ぼす影響
発表要旨
標準化された感情喚起スライド (International affective picture system, Lang et al., 1999) を用いて,刺激の感情価 (快・不快) に対する予期が主観的評価と心拍数に及ぼす影響を検討した.同じ感情価のスライドの連続呈示によって,刺激の感情価を予期できる事態と,ランダムな呈示順序によって,予期を排除した事態を設定した.
その結果,予期の有無は,不快スライドに対する主観的評価と心拍数に影響を及ぼすことが明らかとなった.予期の可能な事態と比較して,予期の不可能な事態では,不快スライドに対する恐怖と嫌悪の評定値が高いうえに,不快スライド呈示中の心拍数の推移は低かった.
この心拍数の低下は,不快スライドに対して配分された注意資源の増加に起因した,定位反応の増大であるものと考えられる.Lang et al. (1997) のdefense cascade modelを考慮すると,予期の不可能な事態における不快スライドに対する定位反応の増大は,より適応的な行動である可能性が示唆された.
●第52回研究会
演者
:浅岡章一先生 早稲田大学スポーツ科学部
人間科学研究科(博士後期)
演題 :「大学生の睡眠習慣と精神的健康との関連」
発表要旨
まず,研究Tでは睡眠-覚醒パターンの乱れが大学生の精神的健康に与える影響を検討した.その結果,睡眠-覚醒パターンの乱れが大学生の精神的健康に与える影響は入学からの時間経過とともに大きくなることが明らかとなった.
研究Uでは大学生の就床時刻後退と関連する要因について,生活時間調査の結果を基に検討した.その結果,就床時刻の後退は深夜帯のTV視聴や会話,アルバイトと関連していることが示された.しかし,このような質問紙調査の結果だけでは,これらの活動と睡眠-覚醒パターンとの間の因果関係は不明なままである.
そこで,研究Vでは,TV視聴に着目し,TV視聴が大学生と高齢者の睡眠-覚醒パターンに与える影響について検討した.その結果,大学生における就床時刻後退の一因がTV視聴にあることを確認した.しかし,その一方で,TV視聴が大学生のメリハリのある睡眠-覚醒パターンの維持に貢献している可能性も考えられた.
