大会企画講演
(19日 14:00-16:00)

演者
西川文二
Motivational Dog Training School "Can! Do" / 主宰
司会
野澤孝司   目白大学

講演要旨
一昨年アメリカ獣医行動学会が、「動物の行動修正にドミナンス理論を用いることに関する意見表明」を行いました。 その内容は、未だに多くのアニマルトレーナーが「群れで生きる動物たちは順位が上のモノには服従するが、下位のものには支配的な行動を示す」といった認識(=ドミナンス理論に基づく認識)をしていること、およびその認識に基づいたトレーニングを行っていることに警鐘を鳴らすものでした。 そして、アニマルトレーニングや行動予防対策、行動修正プログラムなどは、オペラント条件づけ・古典的条件づけ・脱感作・逆/拮抗条件づけといった「科学的根拠」に基づくガイドラインに従うべきであることを、その声明では強調しています。
おわかりのように、ここで言う「科学的な根拠」とは、スキナー等によってすでに20世紀半ばに確立していた学習心理学における各理論に他なりません。 ご存じのように、学問の分野で確立された理論や法則などが、一般の日常レベルに応用され、さらに広く普及するまでには、長い年月を必要とします。 犬のトレーニングも同様です。
日本においては80年代までは、体罰をその基軸としトレーニングがなされていました。 もちろん、それは当時すでに確立していた学習理論で読み解けば、正の罰と負の強化を用い犬の行動を変えていくことに他なりませんが、当時は訓練士も飼い主もそうした理論を知るよしもなく、結果、犬の攻撃性を高めてしまうといった弊害を多々生み出していました。 90年代に入ると冒頭のドミナンス理論に基づくトレーニング方法が日本に広まります。これは、犬の行動学に基づく根拠のあるものとして、当時新しい考え方として広がっていきました。 しかし、2000年に入るとドミナンス理論に基づくトレーニングを用いても、攻撃性を高める犬がでてくるといった弊害は払拭できず、その理論に基づくトレーニング方法に否定的な行動学者が海外を中心に増えていきました。 そうした行動学者たちは、学習心理学に基づく理論を、犬のトレーニングに応用することで、犬の行動を変えていくべき、と主張しました。そして、その主張に共鳴したインストラクター・トレーナーがその考え取り入れ、実践し、現在に至っているわけです。
しかし、未だ多くのトレーナーたちも過去の方法論にとらわれているというのがアメリカの現状であり、冒頭の意見表明はその現状を変えるためになされた次第です。 今回の講演では、こうした犬のトレーニングにおけるその方法論の変遷、及び、現時点における学習理論に基づいたそのトレーニング方法の実際、さらに私も含めいわゆる学問用語にはアレルギー反応を起こしてしまう一般の飼い主に、どうやってその理論を理解させるかについて、お話ししていきたいと考えています。

演者紹介
<略歴>
1981年4月-1991年3月(株)博報堂・コピーライター
2001年4月-現在公益社団法人日本動物病院福祉協会
インストラクター養成講座運営委員
2001年4月-現在専門学校ちば愛犬動物学園・非常勤講師
2009年4月-現在NPO日本ペットドッグトレーナーズ協会・理事
2009年4月-現在千葉科学大学・非常勤講師

<著書>
「もしも、うちのワンちゃんが話せたら・・・」成美堂(2011年)
「改定版 犬は知的にしつける」ジュリアン(2011年)
「うまくいくイヌのしつけの科学」ソフトバンククリエイティブ(2009年)