Japanese Society of Exercise and Immunology
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国際運動免疫学会会誌
Exercise Immunology Review
ISSN 1077-5552

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日本運動免疫学研究会



 若手のための運動免疫勉強会

第6回勉強会  担当:小川貴志子

テーマ:
鈴木克彦、菅原和夫
運動は免疫能を高めるか? 「メカニズムをさぐるW サイトカイン」

臨床スポーツ医学Vol.19, No.11, 2002-11

サイトカインとは

  • 炎症反応、免疫応答、造血、創傷治癒などに関与する各種細胞の増殖・分化・機能を調節する細胞間情報伝達物質の総称。
  • 神経系、内分泌系、免疫系の細胞間の相互作用を担う物質
  • サイトカインの作用は、多様性・重複性を持つ。

サイトカインの分類

  1. 炎症性サイトカイン:炎症反応を促進するサイトカイン:IL-1, TNF-a
  2. 免疫調節性サイトカイン(Th1サイトカイン):細胞性免疫を活性化し、病原体や腫瘍細胞の排除:IL-2, IL-12, IFN-a, IFN-g
  3. 抗炎症性サイトカイン(Th2サイトカイン):炎症性サイトカインやTh1サイトカ
    インの産生を抑制する体液性免疫やアレルギー反応の促進:IL-4, IL-5, IL-10,IL-13
  4. 多機能性サイトカイン:好中球の動員、急性期タンパクの誘導、抗体産生促進、炎症性サイトカインの産生抑制、炎症や免疫応答の時期によってその消長を制御:IL-6, TGF-b
  5. 造血コロニー刺激因子:白血球の活性化、急性炎症やアレルギー性炎症を促進する作用:G-CSF, GM-CSF, M-CSF
  6. ケモカイン:炎症局所に白血球を遊送させる走化性因子の活性:IL-8, MCP-1,RANTES

サイトカインと病態

  • 全身性炎症反応症候群:重篤な感染症、外傷などの極端な生体への刺激→サイトカインが血中へ漏出→炎症反応が全身に波及→血中好中球の刺激応答が増加・骨髄から好中球が動員→微小血管閉塞が容易→血管内皮傷害・循環障害・多臓器不全
  • 自己免疫疾患:Th1優位の過剰な免疫反応→リウマチ関節炎
  • 易感染性・悪性腫瘍の進展・アレルギー反応:Th2タイプ、IL-1ra, 可溶性TNF受容体, 可溶性IL-2受容体, カテコールアミン、コルチゾール、プロスタグランジンE2などの過剰産生→炎症性サイトカインやTh1タイプのサイトカインの産生抑制→感染症など
運動によるサイトカイン動態  
  • 血中のサイトカインは、高強度運動・長時間運動・エキセントリック運動などで変動する
  • 炎症性サイトカイン:激運動開始数時間後に血中濃度が数倍上昇、尿中の方が鋭敏に反応する
  • Th1サイトカイン:激運動で血中濃度は不変もしくは低下する。末梢血単球やリンパ球のTh1産生能も激運動で低下する。
  • Th2サイトカイン:運動により血中濃度が上昇。
  • サイトカイン阻害物質(IL-1ra, 可溶性TNF受容体, 可溶性IL-2受容体)+サイトカイン産生抑制物質(カテコールアミン、コルチゾール):激運動で血中濃度増加。

運動と関連のある病態への関与
 1.運動習慣がある場合

  • 加齢によるIL-2, IFN-g, IL-4の低下が改善される
  • 加齢に伴うサイトカイン産生能の低下が改善され、細胞性免疫が強化される。
  • IgGの血中濃度が増加・Th2タイプのサイトカイン産生を刺激する可能性。
  • リウマチ患者の場合、運動による症状の悪化やサイトカイン産生の低下は認められず、QOLが上がる。
  • 運動が刺激となってサイトカインが免疫系の恒常性を調整、感染抵抗力を高めている可能性がある。
  • VO2max50-60%以下60分までが疾病の予防や治療に良い。それ以上の強度ではIL-6血中濃度増加・好中球のプライミング・筋逸脱酵素が放出し、炎症を惹起

 2.スポーツ選手の易感染性・アレルギー体質

  • 激運動により抗炎症性サイトカイン(Th2)が分泌→免疫細胞の機能抑制→易感染性が高まる。
  • スポーツ選手はTh1優位の遅延型反応が抑制されているため、白せん菌に罹りやすく、ツベルクリン反応も健常人より抑制される。
  • スポーツ選手は、Th2主体の運動誘発喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎が多い。

 3.激運動後の骨格筋の炎症

  • 激運動後筋組織に好中球浸潤、IL-1, IL-6産生
  • 血中ケモカイン濃度上昇
  • 白血球の組織への移行、IL-6, G-CS分泌、好中球プライミング、これらの反応とクレアチンキナーゼ、ミオグロビン上昇とは相関→サイトカインにによって筋の炎症過程が誘導。
  • IL-1, IL-6, M-CSFなど骨吸収サイトカイン上昇、エストロゲンなど骨形成抑制→スポーツ選手の疲労骨折と関連の可能性。

 4.激運動と全身性炎症反応症候群・熱中症

  • 暑熱環境下での激運動→TNF-a, IL-6, IL-12血中濃度上昇→熱中症など全身に炎症反応。
  • マラソンやトライアスロン→消化管の虚血→粘膜損傷部から腸内細菌侵入→高エンドトキシン血症・高サイトカイン血症

 5.動脈硬化性疾患

  • 健常者に比べ血中IL-6, IL-8濃度が高く、IL-10が低い。

 6.オーバートレーニング

  • 激トレーニング→筋・関節など微少な組織損傷→サイトカイン産生→中枢神経に作用→全身症状誘導=オーバートレーニング症候群

サイトカインの制御

  • 運動によるサイトカイン濃度の増加によりおきる炎症反応は、炭水化物の十分な摂取によって抑制できる。
  • 暑熱環境下での運動は、クーリングによって高サイトカイン血症を防ぐ
  • ビタミンC・E・N-アセチルシステインは、運動による筋傷害や酸化傷害を悪化させる

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