博物館開設の目的と経過



早稲田大学文化事業担当理事(1998年5月当時)
野口 洋二

 早稲田大学は創立以来、学内には、美術品や考古・民族学資料や大学史資料など、 本学の発展や学術研究の成果を物語る膨大な資料が蓄積されてきた。これらの資料はいずれも貴重な文化遺産であり、 それを学内外に公開することは、本学の重要な使命のひとつであるといえよう。 しかし従来は、ほとんどの資料が非公開のまま学内各所に分散所蔵されてきた。 そこで、これらの資料を一堂に集めて展示・公開するとともに、これら資料のさまざまな情報を蓄積して、 学内外の研究・教育に活用できる環境をつくることを目的として本博物館は開設された。
 ところで、大学に博物館をつくろうとする動きはこれ迄にも何度かあった。 今から70年も前に會津八一博士が構想した博物館計画もそのひとつである。 近年にも、創立100周年を記念して資料館や美術館を建てようとする動きが起こり、 「 早稲田大学ミュージアム構想懇談会 」 がつくられ熱心に討議された。 だが、これらの計画は結局実現するにいたらなかった。
 今回の計画は、1995年5月、博物館開設の熱意に燃える奥島孝康総長の下で「 博物館開設に関する懇談会」 がつくられたことに始まる。 この懇談会は、全学の英知を集めて開設するための諸条件を討議した。 そして、展示場と博物資料情報センターからなる博物館を二号館(旧図書館の建物 )に開設すべきことを骨子とする報告書を理事会に提出。 さらにそれを受けて、 翌年 「 博物館開設委員会」と「 博物館開設室 」が設置され、展示や電子化のためのワーキング・グループを発足させて、 開設に向け具体的検討に入った。この準備の過程で中心となって計画を進めてきたのは、文学部の美術史学専修や考古学専修、 理工学部建築学科の諸教授である。また学内各箇所から選出された諸委員などの熱心な討議と協力もえた。
 この間、早稲田大学後援会から本図録の作成について多大な援助を受けた。さらには、開館に際し何人かの方々から貴重な資料の寄贈を受けることもできた。 長年の夢であった博物館の開設が実現することになったのは、これら学内外の方々の熱意と協力の賜物である。 新博物館の発足をよろこび、関係各位の熱意にたいし敬意を表するとともに、各方面からの協力と支援にたいして心から感謝したいと思う。



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First drafted 1998