早稲田文化の創造をめざして



早稲田大学総長(1998年5月当時)
奥島 孝康

 長年の私の夢であった早稲田大学會津八一記念博物館がようやく開館の運びとなった。 こんな嬉しいことはない。開設を記念して『開館記念名品図録』を刊行することとなったが、 本図録に収録された名品の一端をご覧いただくだけでも、本学の115年に及ぶ歴史の厚みを実感できるのではないか。
 本学の収蔵する博物資料は意図して収集したものではない。 もとより、その中心を成す會津先生の個人コレクションは、先生の学問的関心と見識とを反映して、見事な学術資料というべきであるが、 収蔵資料全体としてみれば、学術的・体系的資料というにはほど遠い。しかし、すべてはこれからであり、いまは「受け皿」づくりが終わったというだけのことである。 しかし、私は、かねてから本学の先人たちの志を承け継ぎ、先人たちの残された作品と資料を中心としながら、 広く早稲田文化と称するに相応しい資料体の一端を整理・陳列して、学生たちが過去の文化に学び、新たな知の創造をめざす契機として、 博物館の設置を構想してきた。それゆえ、本博物館の発足は、本学の過去と未来の連結点を設けたことを意味する。
 本博物館は、自然から文化までを包摂した体系的資料体を収蔵し、総合的な知を再構築するとともに、早稲田文化を創造する場としては、 あまりにもささやかな試みにすぎないかもしれないが、千里の道も一歩から始まるというごとく、我々が託す志は大きい。
 博物館創設を夢見たすべての先人たちに改めて敬意を表するとともに、本館開設のために努力された関係者各位に対し心から謝意を表する。



Copyright (C) Aizu Museum, Waseda University 1998. All Rights Reserved.
First drafted 1998